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ワンナイト・ヴァンパイア 8

夢にうなされて飛び起きた。 身体は寝汗でぐっしょり濡れていて、前髪もべたついて気持ち悪い。 隣を見ると、気持ちよさそうに寝ている南がいる。 部屋はまだ十分に明るくない。時計が早朝の時間だということを伝えていた。 昨日の夕方から今までの記憶がどうにも曖昧だ。 午前中、南が俺のアパートに来たことは確かなんだけど、その後のことが思い出せない。 南がうちに来たんだからセックスをしないはずがないのに、したかどうかさえはっきりしない。 シャワーを浴びて頭をスッキリさせよう。 寝汗も熱いお湯で洗い流したい。 南を起こさないようにそっとベッドから降りて、着替えの下着と服を持って脱衣所へ向かう。 着ていたシャツは汗で濡れていて、重みがある。 一旦リビングに戻って、カーテンを少し開けて天気を確認。 空は雲で覆われているけど、洗濯物が干せないっていうわけではない天気だ。まだ洗濯物たまってないけど、洗っておこう。 脱いだものを全部洗濯機の中に入れて、セットさせてからスイッチを押す。 残り時間を確認して浴室へ入った。 シャワーが熱いお湯になったのを確認して、このもやっとしたものを頭から洗い流そうとして。 「痛っ、」 お湯が首元にかかった瞬間、覚えのある鈍い痛みが走った。 ふいに浮かぶ、断片的な記憶。 脳裏にぽつぽつと浮かんでは消え、浮かんでは消え。 蛇口を止める手が、少し震えていた。 俺は一呼吸おいてから、鏡の中の自分を見る。 首元には、赤い噛み跡がくっきりと残っていて。 「南……」 噛み跡をなでると愛おしさがこみ上げてきて、今すぐ南の顔を見たくなってきて。 南のいない人生が考えられないぐらい、好きだ。 鏡越しに噛み跡を見ながらさっさとシャワーを浴び、南が寝ているベッドまで戻った。 「ん……」 南はまだ気持ちよさそうに寝ていて、時折むにゃむにゃと言葉にならない寝言を言う。 南の寝顔は本当に可愛くて、見ていると心が落ち着く。 「愛してる、本当に……心から」 額にかかっている前髪をそっと払い、顔を近づけてキスを落とす。 「ふふ……」 南は嬉しそうに少しだけ顔を綻ばせたけど、まだまだ起きる気配はなさそうだ。 二度寝しないで今日を始めようとおもっまけど、たまには南と心ゆくまで寝るのもいいかもしれない。 起きた時よりも慎重になって布団に潜り込み、南をそっと抱きかかえて再び眠りについた。

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