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【番外編】I say

南は俺と一緒に帰ってきても、「八雲さんお帰りなさい」って言う。 「疲れましたね」 「寒くないですか?」 自分のことは二の次で、真っ先に俺の心配をいつもしてくれる。 「南こそ疲れてるだろ?」 「一緒に休もうか」 でも、俺だって南を一番に考えている。 南が嬉しいなら俺も嬉しいし、悲しんでると俺も悲しい。 「えへへ、一緒ですね」 相変わらず恥ずかしそうに笑う顔が眩しくて、それだけで疲れなんか吹っ飛ぶ。 「嬉しいけど、それたぶん錯覚だからちゃんと休んでください」 疲れ飛んだ。 恋人にこんなに自分のことを心配されたら、どんなに疲れてても一瞬で霧散。 さっきまでの気怠さどこいったんだろうか。 「あの、何かしてほしいことがあったら言ってくださいね…?」 心配そうに俺の顔を覗き込んで、ご褒美のような言葉を紡ぐ。 こういうことを言う人は大抵狙ってるんだろうけど、本当に俺のためを思ってくれているのがわかる。 「キスしたら疲れとぶかな」 「き…!」 「南からしてよ」 「オ、レ、から…」 「ね?」 「目は、絶対、閉じててください」 「ん」 俺の手首に手を添えて、ぷるぷるとした爪先立ちが可愛い。俺のために頑張ってくれてる。 ちゅ、と唇に触れるだけのキス。 本当はもっと深いのをしてほしいけど、頰にしなくなっただけでかなり前進。 今はこれで許してあげるけど、もう少し育てていこう。 「元気、でました?」 「すごく」 「あの…もう、いらない…?」 物欲しそうな、とろけた瞳。 そんな瞳を向けられたら、黙っていられるわけがない。 「もっとくれんの?」 「八雲さんがほしいなら……」 「最高……好きだよ、南」 ▽1月31日:愛妻の日 なんか、ちょっと違うような気がしてきた…(遅刻すみません!)

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