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それでもずっと 13

八雲さんの過去の話を一通り聞いて、オレはなんて言葉にしていいか全然わからない。 本当に、こういう時気の利いた一言がぱっと浮かべばいいのにって、自分の頭の回転の遅さに腹が立ってくる。 けど、八雲さんの顔はスッキリしているみたい。 ずっと胸の内に秘めていたものを吐き出せてよかったのかも。 その顔を見たら、聞き手側としては嬉しい。 でも、まだひとつだけ聞いておきたいことがある。 言おうか迷ったけど、八雲さんがこうして全部話してくれてるんだから、オレもちゃんと向き合わなきゃいけない。 「あの、けっきょく……」 「わかってる。女関係のことだろ?」 「いや!…あの、違わないです。ごめんなさい」 「そうやって素直に謝ることができるの、好きだよ」 言いにくいことだっていうのを察してオレに言わせないようにフォローをしてくれる優しさって、誰にでもできることじゃないと思う。 いくらわかりやすいからといって、こんなにオレのことを考えてくれるなんて本当に愛されてるって感じる。 「どんどんやさぐれていった俺に、まあ、何かあったら相談してって話しかけられることが多くて」 たしかにこれだけのイケメンが変わっていったら、そこをつけ狙う女子がいても全然不思議じゃない。 むしろオレも同じように声かけてる、絶対。 「だいたいわかりました。あの…話してくれて、本当にありがとうございます」 「ん…意外と、勇気がいった」 恥ずかしそうに笑う八雲さんに、胸の奥がきゅっと締まった。 オレも昔はあんまりいい思い出がなくて、家族以外心が開かずに苦しい時期があったからよくわかる。 八雲さんも、オレと同じように自分のことを受け入れて求められたいんだ。 だからオレたちはこんなにも依存し合っちゃうんだと思う。 「あの…それでもずっと、八雲さんのこと好きです。大好き」 「うん、南ならそう言ってくれるって思ってた……けどごめん。本当は少しだけ怖かった」 「もう…もう!こんなことで八雲さんから離れるわけないじゃないですか!バカ!」 「あはは、だからごめんって」 顔を近づけて、おでこに触れるだけのキスをされる。 そこから熱がじわじわと広がって、ちょっと怒ってた気持ちがどんどん引いていく。 「南に全部話してすっきりしたらお腹すいた」 「あ、でももう夜ご飯の時間ですよ」 「え、ほんと?」 お互い話に夢中で全然気づかなかったけど、もうすぐ19時になるところだった。 「秋葉さん料理うまいよ」 「八雲さんより?」 「俺の料理は秋葉さんに教えてもらったようものだから」 「へえ…楽しみです」 「居間に行こうか」 「はい」 八雲さんと2人で居間に行ったら、食卓には料理がすでに並んでいた。 福之助さんと八千代さんもすでに座っていて、あとはオレたちだけだったみたい。 その日の夕飯は、すっきりした顔の八雲さんにみんなが安心したのか、すごく和やかな時間だった。 最初はお邪魔かもしれないって不安だったんだけど、八雲さんと出会ってくれてありがとうとか、これからもよろしくしてくれってお願いをされて。 八雲さんの家族と温く過ごせて、今日が一番幸せかもしれないと食後のあんみつを食べながら思った。

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