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それでもずっと 22
目を覚ますと腕の中に南が収まっていて、すやすやと気持ち良さそうに寝ていた。
部屋はまだ暗い。
時計を見たら午前3時を過ぎたところだった。
俺も南もほとんど倒れるようにして眠りに入ったせいで、お互い裸のままだ。
自分はまだしも、南に服も着させずに倒れてしまったことに後悔が募る。
気持ちよさそうに寝てるところ申し訳ないけど、とにかく何か着させないと風邪をひく。
「南、ごめんちょっとだけ起きて」
「……ん、ゃ……」
「すぐ終わるから」
寝ぼけながら嫌がる南に、手早く下着と服を着させる。
最後に布団をかけてやると、すぐに潜り込んで眠り始めた。
南って何をしても可愛いな、と本気で思う。
あとは、汚れたままだったシーツを剥いで夜中のうちに洗濯させよう。
こういう時に、家が大きくて助かったと思う。
ましてやこの時間だから、洗濯機のある小部屋まで誰かとすれ違う可能性は限りなく低い。
「ずいぶんとお楽しみだったようですね」
「う、わ!」
と思っていたのに、一番会いたくなかった秋葉さんに背後から話しかけられた。
「起きてたんですね、秋葉さん」
「意外と夜行性なんですよ、使用人って」
「いつ寝てるんです?」
「うーん、それは秘密」
唇に人差し指をあてて、流れるようにウインクをした。
男の俺でもドキってしてしまうような妖しさで、こんなこと言ったら南に怒られるなって思ったら笑ってしまった。
「南くんのこと考えてました?」
「はい」
「うん、そうだろうなと思った。すごくいい顔で笑えるんですね」
「それ、他の人にも言われたことあります」
「意外と感情的な人だったんですねぇ」
「ほんと、自分でも驚いてますよ」
「そうでしょうね。あ、それ貸してください。洗っておきます」
そう言って、俺が持ってるシーツに手を伸ばしてきた。
さすがに自分たちで汚したものを洗ってもらうわけにもいかず、大丈夫ですと断ったら「俺も洗いたいものがかるんですよ。ついでです」と断るんじゃないという笑顔に気圧された。
「秋葉さん、それ以上箔をつけてどうするんですか」
「この日のために磨いてきたようなものですよ」
「ふは、相変わらず怖いですね」
やっぱり、秋葉さんは敵に回したくない。
優しそうな人に見えるけど頭はかなりキレるし、弁も立つ。
大也もそうだ。
俺のこの性格も、今思えば秋葉さんの影響をかなり強く受けているなと感じる。
それでも秋葉さんに勝てる気はしないけど。
「何回でも言いますが……本当に、嬉しく思ってますよ」
何が、と言わないあたり本当に人が悪い。
思わず笑いが零れた。
「それじゃあ、秋葉さんに恩は返せたかな」
「八雲くんがいい人生だったと思えたときに」
「……俺も、本当に秋葉さんがいてよかった」
「光栄ですね」
あとはやっておくので休んでください、という秋葉さんの申し出をありがたくちょうだいして、自室に戻った。
「やくもさん……」
「うん?」
「んー…はなれるの、だめ…」
腕をのばしてきて、手を引き寄せられる。
早く布団の中に戻れということらしい。
寝ぼけててちょっと甘えたになってる南が死ぬほど可愛くて、口元が緩む。
「もう離れないから、おやすみ」
「うん…おやすみなさい」
明日はいい日になりそうだなんて、柄にもなく思って。
南の額に唇を落としてからゆっくり瞼を閉じた。
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