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【番外編】好きな人の好きなところ
「この前彼氏とランド行ったんだけどさ」
「なに、ノロケ?」
「それがケンカしちゃって」
「マジ?なんで?」
「待ち時間にお互いの好きなところを言い合うっていうゲームをしてたんだけど」
「オチ見えた」
「5分も続かなくて空気最悪」
という女子の会話が聞こえてきて、オレだったら時間が足りないぐらい言い合えるし、もし万が一言えなくなっても絶対にケンカにならないなって思った。
さっそく八雲さんと試したくて「今日行きますね」とメッセージを送り、インターホンを押したのが放課後のハイライト。
「で、今日はなにしたいの?」
「八雲さん、マジでエスパーですね」
「目をそんなに輝かせてたら気がつくよ」
そんなにバレバレだったかな…すぐ顔に出てしまうのは直さないとダメだなって思ってることのひとつ。
オレの考えてることが八雲さんに筒抜けだって思うと、さすがに恥ずかしい。
今日クラスの女子が話してたことを、オレたちだったら時間が足りないっていうところを省いて伝えたら「なんだ、俺だったら1日じゃ足りないな」ってさらっと言うから、言葉に詰まってしまった。
「南も同じこと考えたから今日来たんだろ?」
「おっしゃるとおりです…」
「他のカップルと比べて自慢しちゃうの、すごく可愛いね」
「は、」
「はい、まずひとつ」
「え!」
「次は南だよ」
「なんていうか…スマートというか、うん、そういうところも好きです」
「ふは、なにそれ、ちょっと雑になるところも好き」
「でも好きって思っちゃうからしょうがないじゃないですか…」
「拗ねるときに唇とがらせちゃうのも可愛い」
「オレをからかうときに目を細めて笑うの、かっこよくて好きです」
「へえ?そういうふうに思ってくれてたんだ?」
「あ!それはずるくないですか!?」
「俺は思ったことを言っただけだよ」
嫌味のないにっこり笑顔を向けられて、眩しくてやっぱりかっこよくて目をそらしてしまった。
八雲さんの好きなところはいくらでも言えるけど、ゲームってなったら話は別なんだってやっと気がついた。
悔しいけど、何枚も上手な八雲さんに勝てるはずがない。
「もー…好きですー…」
それでもオレは八雲さんバカだから、八雲さんの胸に顔をぐりぐりと埋めて甘えてやる。
「誤魔化すように甘えるところも愛しいって思うよ」
「もう…バレバレじゃないですか…」
「こういう俺は嫌い?」
「そういう八雲さんも好きです」
もしこのやり取りを矢吹さんが見てたら「糖尿病になりそう」って絶対に言われるってぐらい、すごく甘々な空間になってる。自分でもわかるぐらい甘い。
でも八雲さんに好かれてるなとか、求められてるなって感じることができるのは、オレにとってすごく幸せなことで。
こんな時間がいつでも続けばいいのにって思う。それはきっと、いや絶対に八雲さんも同じ。
「こういうやり取りも好き」
「八雲さんとすることはなんでも好きです」
「なんでも?」
「な、なんでも…」
「そっか、じゃあ今夜は頑張ってもらおうかな」
にっこり笑った八雲さんに何をされたかは、ご想像にお任せってことで。
▽6月12日:恋人の日
ただのバカップル
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