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ミナミセキュリティー
「お前、ついに合鍵渡したんだって?」
講義室で席に座ってスマホをいじっていたら、大也が隣に座りながら話しかけてきた。
南が頰ゆるゆるの可愛い顔で、合鍵もらった自慢を大也にしたんだろうなっていうのが簡単に想像できた。
「渡しちゃったね」
「はるくんがますます汚れていく」
「いや…俺が手に塩かけて甘やかしてるんだから汚れることはないだろ…」
「お前のそういうところ、ムカつくけど嫌味がなくて好感持てる」
「いや、大也に好かれようと思ってないから」
「あはは、それはムカつく」
いかにも棒読みですっていう空笑いをする大也は、俺から見ても南のことを大事にしているのが伝わる。
昔南がいじめられていたことが大きな理由ではあると思うけど、単純に兄として守るべきときは守り、怒るときは怒ってるからいい兄弟だと俺は思ってる。
ちょっとお互いブラコン気質なところは妬けなくもないけど、俺も姉さんがいることの大切さっていうのはよくわかってるし、心に秘めておく。
といっても、大也にはバレバレだと思うけど。
でも、そういうことを俺に言ってこないあたり大也の優しさというか、気遣いが嬉しかったりする。
大也には死んでも言わない。これは墓まで持って行く。
「まあ、でも、お前じゃなかったら合鍵へし折ってたな」
大也なら粉々にしかねない、という言葉をすんでのところで飲み込んだ俺に拍手を送りたい。
後からねちねちと嫌味を言われるに決まってる。
「本当はもう少し早く渡したかったんだけど」
「ふーん?ま、悠太もバカじゃないし、受け取ってもいいと思ったんなら文句は言わねーよ」
本当に、よく弟のことを理解している兄だと思う。
俺からの贈り物はなんでも全部喜んで受け取りそうってたしかに思うけど、そういうところはしっかりしてるのが南で。
俺と南の関係性がここまでしっかりしてなかったら、きっと「オレにはまだ早いです」って、申し訳なさそうに笑いながら断ってたはず。
「まあ、末永くよろしく」
「改めてそう言われるとやだわ」
「南とはずっと一緒にいるから」
「泣かしたら殺す」
「ははは、治安が悪い」
大也と仲が良くてよかったと本気で思った。
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