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琥珀と孵化

誕生日プレゼントに八雲さんからもらったキーケースは明るい茶色で、ちょっと意外だった。 というのも、八雲さんの私服や持ち物って白黒が多いから、茶色を選ぶ八雲さんが想像しにくいなって思って。 「その色、琥珀色っていうんだ」 「琥珀?」 「南の瞳と同じ色」 「へ、」 「好きなんだ、南の瞳」 「そう、なんですか」 「うん…すごく綺麗だ」 なんてうっとり顔で言われてしまい、恥ずかしすぎて全然気の利いた言葉を言えなかったのが悔やまれる。 まあ、そんなオレを見るのが好きなんだろうけど…。 ということで、なぜこの色にしたのかっていう答えは「八雲さんはオレのことが好きすぎるから」となった。 このキーケースからも八雲さんの気持ちが伝わってくるようで、朝起きたときと寝る前に眺めるのが最近の日課になってる。 失くしたり汚したりするのが怖くて、まだ1回も持ち歩いたことがない。 そのことを八雲さんさんに打ち明けたら、「物を大切にするところが好きなんだ」と言われてしまった。 さらに「南が使いたいなって思ったときに使って?」と続けて言われ、最初からわかってたんだなと思った。 ちなみに、合鍵のほうもまだ使えてない。 八雲さんがもう部屋にいることがわかってる時は、ピンポンしないで入るようにはなったけど。 やっぱり、その、いけないことをしているような気分になっちゃう。 あと、子どもっぽいって笑われるかもしれないけど、初めて合鍵を使うときは、何か特別なときがいいなって思ってて。 それがいつなのかはまったくわからないけど、その時が来るまでは大切にしまっておきたいんだけど。 「もし何かあった時のためにも、合鍵は持ち歩いてほしい」って真剣な顔して言われたこともあるから、合鍵だけは肌身離さず持ち歩いてる。 それにしても、超ハイスペックでイケメンな八雲さんと今付き合えてることが、今でも不思議な感じがする。 こんなこと言ったら八雲さん悲しがるかもしれないけど。 オレのことを救って変えてくれた八雲さんに憧れて弓道教室に通い始めて、そこで運命的な再開をして、何回もめげそうになりながらもアタックし続けて本当によかった。 八雲さんに出会えてなかったら、オレはきっと今でも兄ちゃんの後ろに隠れて生きていたと思う。 今でも悲しかったり辛いって思う時もあるけど、それさえも楽しいって感じられる。 それもこれも全部、八雲さんのおかげ。 過去のオレ、未来のオレはめちゃくちゃ幸せだからそのまま頑張れって伝えてあげたい。

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