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自覚 2

俺の気持ちを知ってから知らずか、大也は話を続ける。 「俺の弟ってさ、健気で可愛いんだよね」 ……知ってる。 「真面目で、気遣いができて、だけど抜けてるところもあって」 知ってる。 「ちょっかい出すといちいち可愛い反応してくれるし」 それも、知ってる。 「それでさ、ここ数日お前が体調不良で休んでるの、マジで心配してるんだよね」 「……」 「悠太はまだケータイ持ってないからさ、毎日銅さんに電話してんだわ」 それは、知らなかった。 当然だ、俺だって南の連絡先なんて知らないし、右京さんからの連絡も無視してたから。 「俺、悠太のこと好きだからさ、アイツが心配だと俺も心配になっちゃうわけ」 大也は容赦なく言葉で、視線で俺のことを突き刺してくる。 今すぐ、南のところへ行きたいと思った。 会って何を言えばいいかわからないけど、南の顔を見て、声を聴きたい。 「……本当はもっと言ってやるつもりだったけど、そんな顔されたら冷めたわ」 「え……?」 「俺の優しさに感謝しろよ、ヤリチン」 「ヤリ、」 「じゃーな、八雲」 初めて、大也から名前を呼ばれた。 今まで「おい」とか「お前」だったのに。 自分のたったひとりの弟のためにさっきまで怒りを露わにしていたのに、感情のコントロールがうまい。 他人にも自分にも厳しく、でもちゃんと相手のことを考えてくれる優しさがある。 この時初めて、大也は信頼できる人間なんだと俺は感じた。 「……よし」 女とホテルを出るところを大也に見られてて、逆によかった。 お陰で目が覚めた気分だ。 俺はこんなところではなく、今すぐ南に会いに行かなければいけない。 そう思って走り出そうとしたけど、南は今学校で授業を受けているはずだ。 南に会いに行けないことが、もどかしい――。 こんな気持ちのまま家に戻ることもできず、迅る気を抑えられずに南の通う中学校へ向かって歩き出した。

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