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自覚 3

八雲さんと会わなくなってから、今日で1週間が経った。 まだ中学生のオレはケータイを持たせてもらえてなくて、八雲さんに連絡をしたいのにできない日が続いてる。 毎日銅さんに連絡しているけど、銅さんのほうにもここ数日は音沙汰がないらしい…。 もし何か事件や事故に巻き込まれていたら――と悪い方向への考えが止まらなくて、すべてのことに身が入らない。 このままオレの前から消えてしまいそうで、不安で夜も眠れない。 本当は学校なんかサボって、八雲さんのことを探しにいきたい。 八雲さんと会わなくなって、オレとの関係がこんなにも弱くて細かったんだなと思い知らされた。 「まだ八雲さんと連絡つかないの?」 暗い顔をしていたであろうオレを見かねて声をかけてくれたのは、この中学に入ってからできた友だちの柳。 出席番号が前後で話すようになって、気がついたら友だちになってた。 「うん……もう会えないかも……」 「情緒不安定かよ」 「だって」 「ちょっとは信じて待ってあげれば?」 信じて待つ、か…。 たしかにオレできていなかったかもしれない。 小学生のときいじめられたことがあるオレは、その時から人を信じることを無意識にやめていたかも。 八雲さんのことを心配してるのは、オレだけじゃない。 ひとりで慌てたってしょうがないよね。 「なあ、おい、南!」 「なに?」 柳は窓の外を指差して、珍しく慌てたような顔をしてオレを見る。 何事かと思ってオレも窓の外を見れば、校門のところにひとりの男の人が立っていて。 その視線はオレを捉えているかのように、迷わずこっちを見上げている。 「あれ、八雲さんなんじゃねーの?」 「ごめん、オレ帰る!」 「は?あ、おい!」 「適当にごまかしておいて、お願い」 柳の返事を待たずに、オレはスクールバッグを持って教室を飛び出した。 授業をさぼるなんてこと、今まで一度もしたことなかったのに。 八雲さんを見た瞬間考えるより体が先に動いてた。 下駄箱まで走る途中、先生に注意された気がするけどそんなことどうでもいい。八雲さんのことしか考えられない。 急いで靴に履き替えて、八雲さんがいなくなってしまう前に会いたくて走る。 ちゃんと視界に捉えてるのに、瞬きしたら消えてしまいそうな不安があってスピードがあがる。 八雲さんもオレに気がついて、校門のところで待ってくれている。 「南!」 「八雲さんっ」 伸ばしてきた八雲さんの手を握り返して、学校から離れるようにして2人一緒に走る。 久しぶりの八雲さん。 手を繋いで一緒に走って、なんだか映画のワンシーンみたいでドキドキする。 でもそんなドキドキもすぐに終わって、学校から1本先の道を渡って曲がったところで止まった。 「南、ごめん。心配かけた」 「そうですね…すごく心配しました」 「うん。本当、ごめん」 「体調、もう大丈夫なんですか?」 オレの問いかけに一瞬苦い顔をしたあと、ここ数日連絡がとれなかった理由を聞いた。 八雲さんがそんなことを…ってショックは受けた。 だけど、言いづらいことをオレの目を見ながら、ゆっくり話してくれたことが何より嬉しくて。 「話してくれて、ありがとうございます」 「許されることじゃないってわかってる。本当に、ごめん…南の気持ちを踏みにじった」 「……一言だけ、いいですか?」 八雲さんは視線を逸らすことなく、静かに頷いた。 オレとちゃんと向き合ってくれようとしてくれてるのが伝わる。 「八雲さんの…バカ!でもやっぱり好き!」 八雲さんにバカなんてこと、言うのにすごく勇気がいった。 言っちゃった…って心臓ドキドキしてる。 八雲さんはしばらくぽかんとしたあと、ふっと吐息をもらしてくつくつと笑いだした。 「一応、真剣だったんですけど…」 「あはは、うん、わかってる。ごめんな?」 「わかってるならいいです…」 「はは…俺、南の拗ねた顔可愛くて好き」 「は、え、え!?」 「すぐ顔が赤くなっちゃうのも可愛いよ」 「え、えっと…告白大会ですか…?」 「どうだろうな?」 「そ、そこはぐらかすんですかぁ…」 「かわいいなお前」 「オ、オレも八雲さん好き!」 「うん、知ってる。ありがとうな」 そう言って、初めてふわっとした笑顔を見せてくれた。 オレには八雲さんのまわりに花のエフェクトが舞ってるように見えて、思わず見惚れてしまった。 たぶん、八雲さんの好きは人としてなんだろうけど、こんな笑顔見せられちゃったら勘違いしそうになる…。 もう自分の気持ちに蓋をしたくないから、絆されてくれるまで好きって言い続けよう。 その後、八雲さんと一緒に銅さんのところに行ってしこたま怒られたのは言うまでもない…。

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