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決意 1

八雲さんと一緒に銅さんが用意してくれた軽食を食べ終えたあと、気持ちを落ち着けさせたいと一致したオレたちは道着に着替えて弓を引いている。 久しぶりに見る八雲さんの道着姿は、言うまでもなくかっこよくて。 着替えるときもなんだか気恥ずかしくて、変にずっと俯いてた。 意識しないようにすればするほど八雲さんを感じてしまって、この不純な気持ちを道場に持って行くわけにはいかないとタオルに顔を押し当てて吐き出した。 そのタオルをしっかりロッカーにしまい込んできたはずなのに、さっきから八雲さんの射法から目が離せなくなってる。 「数日とはいえブランクがあるにしては、相変わらず美しい」 「はは……右京さんの教えはしっかり身体が覚えてますからね」 「弓道以外の教えもしっかり刻んでいただきたいですね」 さすが銅さん。さっきからこの感じで八雲さんをチクチクと刺していて、少しずつダメージを負わせている。 もうやめてあげてって思う反面、二度と同じことができないようにしてやってほしいとも思う。 でも、今は八雲さんがここにいるだけで嬉しい。今はそれだけで十分。 どんなに小さなことでも、八雲さんへの気持ちは全部大事にしたい。 ――弓を持って的前に立つ。 オレは、八雲さんのことが好きだ。 人としてっていう意味じゃなくて、ちゃんとそういう気持ちで。 ――弓を構えて、両手を頭上に持ち上げる。 欲は言わない。 振り向いてもらえるとも思ってない。 ――左右の手を少しずつ引き離していく。 好きだからこそわかる。 出会った頃に比べて、好意を感じるようになった。 ――会。 オレが八雲さんに釣り合うとも思ってない。 きっと、もっとステキな人が隣にいるべきだとも思う。 でも、他の誰かが八雲さんの隣にいるのは想像したくないから。 ――想いを乗せて、矢を放つ。 この気持ちを、何もしないまま諦めたくない。 ――矢は、的の真ん中に向かって綺麗に刺さった。 今の関係が壊れることになってしまったら、その程度のものだったってことだ。 ゆっくり息を吐きながら、弓を下ろす。 オレの心の中はすごいスッキリしてて、このまま青春映画よろしく走って叫びたい気分。 もう一度、自分が放った矢を見る。 綺麗に真ん中。ど真ん中。 背中を押されてるような気さえする。 「今の、綺麗な射だったな」 八雲さんに声をかけられて振り向くと、オレを捉えて離さない瞳と目が合う。 「はい。気持ちもスッキリしました」 「そっか。オレも、見ててなんか吹っ切れた気分」 そう言って笑った八雲さんに、オレの心臓がぎゅって締め付けられる。 好き、やっぱり好き。 もうごまかせないし、見て見ぬ振りもできない。 「同じですね」 だけど、さすがにこの場で伝える勇気はさすがになくて、笑ってやり過ごしてしまった。

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