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決意 2

八雲さんへの憧れが恋愛感情に発展したと自覚してから早数ヶ月。 季節は移り変わり、あっという間に年が明け、気がついたらオレは中学2年生に進級していた。 自分の気持ちに嘘はつきたくないと思っても、じゃあ行動に移せるかと言われたら、もちろん答えはノーなわけで。 今日こそ伝えてやると心に誓っても、なかなか言い出せずにいる。 オレが女の子だったら、八雲さんもそういう意味で意識してくれるのかなとか、考えても意味のないことで悩んだり…。 今の関係とか距離感が壊れるのが怖くて、むしろ前よりちょっとぎこちなくなってる気さえしてきた。 前と同じようにって意識すればするほどきょどっちゃって、本当に我ながら情けない。 「南、最近なにかあった?」 「えっ、とくに…」 「本当に?」 「ないです本当!全然、ふつうです」 「南からの相談ならなんでも聞くから、遠慮しないで言っていいからな」 本当ですか?八雲さんのことが好きです!付き合ってください! っていう言葉を心の中で叫んで、家に帰ってから何度落ち込んだことか。 家は家で兄ちゃんに「アイツだけはやめておけ」って諭されるし、ていうかオレ何も言ってないのに気づかれてるし、そんなにオレわかりやすいなら八雲さん早く絆されてよって言いたくなるし、むしろ告白されるまで待つか?ってヤケになって。 ひとりで抱えきれなくなったオレは、矢吹さんと立花さんに相談することに決めた。 「え、八雲さんに振り向いてもらう方法?」 「矢吹さん、フォークで人のこと指すのやめてもらってもいいですか…」 「俺らと違って南にめちゃくちゃ優しいじゃん、それじゃダメなの?」 「立花さんは興味なさそうに欠伸するのやめてくれません?」 「だってさー」 立花さんが目元を擦りながら怠そうに言って、矢吹さんは隣でうんうんと頷いてる。 ふたりに相談したオレがバカだったなと、オレンジジュースをストローで吸いながら後悔した。 「オレと釣り合わないってわかってるんですけど、でも、諦めたくなくて…」 「八雲さんねぇ……南にかなり甘いよな」 メープルシロップをふんだんにかけたパンケーキを食べながら、矢吹さんが言った。 「わかる、過保護かってぐらい甘い」 「俺らとの対応の差見れば歴然だと思うけど」 「それは海にも非があるからなんとも言えない」 「わあ、突然の裏切り」 「……それで、どうすればいいと思います?」 矢吹さんと立花さんの幼なじみコントが始まりそうだったのを止めて、元の話に軌道修正。 やっぱりこの人たちじゃなくて兄ちゃか、銅さんに相談したほうがよかったかもしれないと激しく後悔した。 「そうだな……矢吹さんからアドバイスするとしたら」 「するとしたら?」 「ああ見えて、八雲さんは押しに弱い」 「押しに弱い……」 「最近八雲さんに対してぎこちなくしてるみたいだけど、それを直す。んで、とにかく押す」 「とにかく押す……」 「あの八雲さんが俺にも相談してきたんだぞ、最近の南が俺にだけ変だって」 「え、そうだったんですか?」 「その相談俺もされた」 「立花さんも?」 「ごまかしておいたけど、相当気にしてたぞ」 オレからはふつうに見えてたけど、不安になってたんだと知って申し訳ない気持ちと、ちょっと嬉しい気持ちもあってニヤニヤしちゃう。 さっそく明日から行動に移そう。 八雲さんは押しに弱い。脳みそに刻んだ。 「ま、頑張れよ少年。ここは昴がまとめて奢ってやるから」 「南はいいけど海の分は払わないから」 なんでだよーと立花さんに泣きつく矢吹さんを見て、こうはならないようにしようと誓った。

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