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【番外編】10月31日の遊戯
「八雲さん、トリックオアレポート」
「帰れ」
「可愛い後輩が留年してもいいの?」
「どこに可愛い後輩がいるんだよ」
「ヤバイよ八雲さん、眼科行ったほうがいい」
「病院に行くのはお前だっての」
「げ、昴」
「海、今日提出のレポートあるの忘れてるでしょ」
「マジ?どれ?」
「哲学」
「八雲さん、トリックオア哲学レポート」
「帰れ」
という茶番をしていたのは3時間前、学食にて。
無駄にいい発音で今年も懲りずにレポートをねだってきた矢吹を、手でシッシッと追い払うジェスチャーをさせ、立花に引きずられて行った。
こいつは学習能力があるのかないのかわからないな、と内心呆れつつ、矢吹を無視してラーメンを啜ったのだった。
その愚痴エピソードをけらけら笑って聞く南を見ると、どうでもよくなるから不思議だ。
「南、トリックオアトリート」
俺がそう言うと、南はぼっと顔を赤くさせて俯いてしまった。
さっきからなんかそわそわしてると思ったら、こう言われたときのことを考えていたのかもしれない。
「お菓子ないから……あの、どうぞ……」
制服のネクタイを緩め、ボタンを外して鎖骨まで覗かせてきた姿に頭がくらっとする。
色白だけど健康的なみずみずしい肌に、俺の視線は釘付けで。
まさかそうくるとは思ってなかったから、思わず唾を飲み込んでしまう。
「なるべく優しくするけど……久しぶりだから、辛かったら抵抗して、お願い」
「やばいって思ったら、そうしますね」
南の首筋に顔を近づけて、その白い肌につぷ…っと牙をたてた。
「ん、」
鼻から漏れる吐息が高校生らしからぬ色っぽさで、少しでも気をぬくと抱き殺してしまいそう。
ダメだってわかってても、久しぶりの南の血は芳醇で、なめらかで、ほどよい甘さで、もっと次を求めてしまう。
そのうえ、吸い上げるたびに南が小さく声を漏らし、肩がぴくっと跳ねるから性的欲求も膨らんで。
「ぁ……やくもさん、」
髪を柔く引っ張られて、名残惜しいけど首筋から牙を抜く。
「辛くなった?」
「あの……」
「なに?今さら遠慮しなくていいよ」
「幻滅しないって、約束できますか…?」
「大丈夫。しないよ」
「……ちょっと、たっちゃった……」
腕で顔を隠し、もう片方の腕はその部分を隠すように添えられていて。
あまりのえろ可愛さに俺の感情はもう絶頂。
世界中どこを探しても、こんなに可愛いいきものはどこにもいないだろうと断言できる。
「ねえ、今ので俺もたっちゃったんだけど」
「ん……」
「責任とってくれない?」
相変わらず初な反応をして頷く南を見て、明日寝坊するかもと思いながら唇を合わせた。
▽10月31日:ハロウィン
遅刻のうえに微なかんじですみません…
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