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朱の桜 4

自分から好きと伝えるのが、こんなに勇気のいるものだなんて知らなかった。 ただのキスだけなのに、こんなに緊張するものなのかと驚いた。 今までの俺は何だったのか疑問に思うぐらい、こんなに情けなく感じるなんて思いもよらなかった。 軽い感じで好きだと伝えてきた南は、実はすごい頑張ってくれていたのかもしれないと思うと、より一層愛しさが込み上げてくる。 南とする初めてのキスは、そういった感情がぐるぐる胸の内を駆け巡り、少し恥ずかしくなり甘酸っぱかった。 俺の緊張がバレないように、ちゅっと本当に軽いキスをして一度離れる。 世界はオレンジに染まるなか、南の顔が朱くなっているのがすぐにわかった。 「顔真っ赤」 「だ、だって……」 「キス、どうだった?」 「なんか…恥ずかしくて、死ぬほど熱かった…」 「ははは、そんな初めてでもあるまいし」 「………」 「え、うそ、初めて?」 「そうですよ!だってずっと八雲さんしか好きじゃなかったんだもん!すいませんね経験がなくて!」 最近の子っていろいろ早いし、南もなんだかんだ女の子と付き合うような経験があるんだと勝手に思い込んでた。 かけど、そうか、南は本当にずっと俺だけを好きでいてくれたのか。 やばい、にやけそう。 「南の初めてを奪えて嬉しいよ」 「う、うば…」 「でも、俺の初めてはあげられなくてごめんね?」 「なんで八雲さんて、もう、やらしい!」 顔をゆでダコみたく真っ赤にさせて、パシパシと腕を叩かれる。 反応の仕方がいちいち可愛くて、南をいじるのをやめられない。 ひとしきり叩かれたあと、でもそういうところも好きですとか小声でぽそっと言うから、また軽率にキスをしたくなる。 「はは、ほんと、早く応えてあげればよかったな」 「……オレ、本当は今日も好きって言って何もなかったら、諦めようと思ってたんです」 と、話し出した南に驚く。 そこまで深刻になっていたなんて知らなかった。 「でも、柳に言われちゃいました。好きなんだろ?って」 また、ここでも柳。 南の親友で、下手したら俺より南のことを理解しているかもしれない。 南が俺以外のことを好きにならないだろうなんて、どこかで甘い考えがあったのかもしれない。 あそこで南との距離の近さを見せつけられて、煽られなかったら今日告白していなかった。 「だから、八雲さんにハッキリ断られるまで好きって伝え続けようって思ったんです」 「うん…。本当に、俺のことを好きになってくれてありがとう」 「え!?いや、そんな感謝されることじゃ…」 「なんで?言わせてよ。本当に…ありがとうじゃ足りない」 「それじゃあ…もう1回、キスしてほしい…」 「おねだりの仕方、可愛いね」 親指で唇に触れると、ぴくっと肩が震えた。 こういうことに慣れてない初な反応が可愛くて、大切にしていこうと心の中で違う。 南とはゆっくり、ゆっくり進めていければいい。 だから今日は、触れるだけの軽いキスだけ。 それでもやっぱり、南の頬は朱に染まり、恥ずかしそうに顔をうつむかせた。

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