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【番外編】ど遅刻バレンタインネタ

2週間前から八雲さんに渡すためのチョコ菓子作りを練習していたのに、バレンタイン前日のいざ本番ってときに大失敗をしてしまった。 おすすめのレシピを教えてもらった矢吹さんに連絡したら、それならとおいしい洋菓子屋さんを紹介してくれて。 学校帰りに寄ってみたら、やはりバレンタイン当日。完売したらしく棚は空っぽ。 そこからさらに何軒かお店を回ってみたけど、完売しているかオレの所持金じゃ買えないようなチョコ菓子ばっかり。 「ど、どうしよう…」 コンビニを覗いてもバレンタイン用のチョコ棚はすっからかん。 今から作る時間もないし、どうすればいいか途方にくれていたところ、運悪く八雲さんとばったり会ってしまった。 「南…どうしたの、泣きそうな顔して」 八雲さんは普段使っているバッグを左肩にかけ、右手には大学でもらったのであろうバレンタインチョコが入った紙袋を持っている。 何個もらったかはわからないけど、大きさを見るに少なくはない。 ますます八雲さんに合わせる顔がなくて、今すぐ走って逃げ出してしまいたくなる。 「大丈夫か?具合でも悪い?」 オレのほうに駆け寄ってきて、心配そうに顔を覗きこまれる。 居た堪れなくなって、申し訳なくて、恥ずかしくて、瞳いっぱいに涙が溜まっていくのがわかった。 「一旦俺んちまで行こう。歩ける?」 「……はい」 八雲さんは歩いているあいだ、オレのことを気にかけて何も話しかけてこなかった。 今なにかしゃべろうとしたら涙が溢れてしまいそうだったから、八雲さんの優しさにひたすら感謝をして。 なんて言い訳をしようか考えていたんだけど、いい案が浮かぶ前に部屋に通されて座ってしまっていた。 「何があったか俺に言える?」 頭を撫でながら優しく問いかけられて、オレは観念してぽつぽつと吐露した。 「なんだ、そんなことか」 「そんなことって…」 「俺は…また南に何かあったんじゃないかと思って、すごく心配した」 「あ――」 オレ、自分のことしか考えてなくて、八雲さんが心配してくれてることに気がつけなかった。 ガキっぽい自分が情けない。 「もう、そんなしょぼくれんなって」 「……ごめんなさい」 「南が俺のためにしてくれたってだけで十分嬉しいよ」 「でも、チョコ…」 「大丈夫、今チョコ以上のものもらうから」 「え?」 なんですか、という言葉を発する前に、八雲さんから啄むようなキスをされて。 「もっと、いい?」 耳元で甘く囁かれて、操られるように頷いた。 ▽2月14日:バレンタインデー ど遅刻申し訳ありませんでした…

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