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なにはさておき 5
「っ、」
八雲さんは首筋にキスをしながら、手はお腹と腰をやさしく撫でていく。
やわらかい髪の毛がふわふわとあたって、くすぐったさに身じろいだ。
好きな人にからだを触られるって、こんなに恥ずかしくて緊張するのだと痛感する。
八雲さんが触れていったあとの肌は燃えるように熱くて、オレの心臓は耳元で
鳴っているんじゃないかっていうぐらいバクバクとうるさい。
「お前、心臓の音すごいね」
八雲さんの手は、オレの心臓の上を素肌で触れてくる。
手のひらの温度としっとりした感触を感じて、そのまま心臓を掴まれてしまうんじゃないかと錯覚する。
「もう…あんまり言わないでください…」
少しでも恥ずかしさを紛らわそうと腕で目を隠すけど、八雲さんに手首を掴まれてあっさりとどかされてしまった。
「自分から誘ってきたくせに」
「……」
まったくその通りで、返す言葉もない。
八雲さんの優しさを押し切ってまでしてもらっているのに、すごく情けない。
「後悔した?」
はっとして八雲さんの顔を見ると少し困ったように笑っていて、心臓がきゅっと締め付けられた。
「笑わないで、聞いてほしいんですけど、」
「え?」
「…好きな人に触られることが、こんなに恥ずかしいなんて知りませんでした」
ぴく、と八雲さんの手が肌の上で反応する。
「八雲さんが触ってくれたところ、すごい熱くて…でも、嬉しい」
「お前、そうやって無自覚に煽ってくるの質悪い…」
「でも、八雲さんに嘘つきたくないし…」
「だからっ…もう…本当に南には勝てないな」
「え?」
「お前のことが好きすぎて困るって話」
「ふがっ」
ぎゅむ、と八雲さんがオレの鼻を摘まんできて、思わず変な声が出てしまった。
でも、八雲さんの顔がちょっと赤くなってるのを見逃さなかった。これは照れ隠しだ。
「八雲さんでも照れることってあるんですね」
「それは俺が一番驚いてる。全部お前のせい」
「…ふふふ」
「嬉しそうだな、こら」
「わっ、」
八雲さんの手はいきなりオレの胸のほうに伸びていて、その小さな突起をかすめていく。
触られるんだろうなっていうのはわかってたけど、実際にここを触れられるとめちゃくちゃ恥ずかしい。
オレの反応に満足したのか、さっきまでの照れはどこへやら、あっという間にドSにシフトチェンジしていた。
「次は俺の番ね」
「次もなにも、ずっと八雲さんのターンじゃないですか…!」
「うーん、そうでもないかな」
言うや否や、八雲さんは何の変哲もないまっ平なオレの胸を手のひらで撫でる。
「あの…胸、ないよ…?」
「あったらびっくりするだろ」
「いや、まあ、そうなんですけど」
言いごもるオレの意思に関係なく、肌の質感を確かめるように撫でては乳首を指の腹でくりっといじられる。
慣れない感覚に小さくぴくっと反応しちゃうけど、女の人みたいに気持ちよくなるわけでもなく。
だんだんといたたまれなくなってきてしまう。
「や、八雲さん…」
「ん?」
「あの…そこまで、気持ちよくならないから…」
「だろうな」
「えっ」
「これから俺が育てていくんだから、最初はこんなもんだろ」
「えっ」
「え、なに?」
「八雲さん…えろい…」
「もっとえろいことするのに?」
「は――」
そう言って触れてきたのは、もうとっくに反応しまくってるところ。
「あっ、」
服の上からつつ、となぞられただけで、じわりと気持ちよさが広がっていく。
自分で触る時とは違った感覚に、背中がふるりと震えた。
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