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なにはさておき 7
八雲さんの手でイかされたオレは、今までにない倦怠感に覆われていた。
仰向けに寝ているのに、上から誰かが乗っているんじゃないかと思うぐらい。
今日は初めて感じることだらけで、まだ頭がうまく働かない。
「南、普段から終わった後くたってしちゃうの?」
「ううん…しない」
「へえ…やっぱり普段してるんだ」
「……それはずるくないですか……」
「あはは」
八雲さんの誘導尋問恐るべし。
ぱっと頭に浮かんだのは、巧みな話術で相手を陥落させていく取調室にいる八雲さんだった。
からかってきそうだから絶対に言わないけど…。
そのまま目をつむって、八雲さんを誘ってからのことを思い返す。
されるがままとろとろに溶かされたとはいえ……オレ、けっこう恥ずかしいこと口走ってなかった?
次々と思い返される言葉たちに、思わず眉間が寄って口元が変に歪む。
「可愛い顔してどうしたの」
「いや…ちょっと…強いて言うなら反省です」
「なんで?すごく可愛かったのに」
「あ、はい…もう…なんでもお見通しじゃないですか…」
「まあね。ちょっと吸ってきていい?」
八雲さんは、オレがいるときはタバコを吸おうとしない。
もし吸っていたとしても、オレが近づく前にジュッと消してしまう。
家にいるときだけは吸うけど、ベランダに出て窓をきっちり閉めるし、1本で終わらせる。
そもそもオレの前で吸うことが嫌らしく、何度もお邪魔してるのにその姿を見たのは2回だけ。
「家で兄ちゃんが吸ってるし気にしないですよ」って言ったことがあるんだけど、「お前のこと大事だから」と言われてしまい、何も言い返せなかった。
翌日、兄ちゃんが「あいつ過保護すぎ」と愚痴ってからは、リビングで吸う回数が減っていった。
兄ちゃんには悪いけど、口元がつい緩んだのを覚えてる。
いいですよ、と言おうとした言葉を飲み込んで、八雲さんの下半身に目を向ける。
「八雲さん…出さなくていいの…?」
「ああ…お前は気にしなくていいよ」
いや気にしますが!?
だって、あんなに勃たせたものをオレのに押し付けてきたくせに。
それに自分だけ気持ちよくされっぱなしじゃ、一応オレだって男だし、不満だ。
「八雲さん、オレに触られたくないの?」
「えっ」
ぽろ、と手に持っていたタバコを床に落とす。
もしかして慌てたのかな?その反応がおもしろくて、ちょっといい気分になった。
「そりゃ経験ないし、他人の触ったことないし…ヘタかもしれないけど…」
「だから、こういうのは少しずつ慣れていけばいいから」
「でも、だって、オレだけ気持ちよくなっても意味ないじゃん」
「今日は南の可愛いところ見られただけで満足だよ」
「~~もう!オレだって好きな人目の前にして興奮してるんですよ!バカ!」
言ってやった、言ってしまった、八雲さんにまた反抗してしまった。
怖くて真っすぐ見られないけど、間違ったことは言ってない。
「ウザいって思うかもしれないけど、でも、八雲さんのことそういう意味も含めて好きなんですよぉ…」
「あーもう、ごめん、泣くなって」
「だって、八雲さん、ばかぁ…」
「悪かった。南の涙に弱いからほんと…」
「じゃあ、さわらせてください」
「急に潔くなって、もう…可愛いなぁ」
「んっ…八雲さんってキス好きですよね」
「好きだけど…今のは南がしてほしかったんだろ?」
「……好き」
八雲さんの腰に腕を伸ばし、顔を埋めてぎゅっと抱きしめる。
これが顔を見られたくない照れ隠しだっていうのがバレてそうだけど、もういいや。
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