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真夜中ラヴァーズ 1
あの日以来、八雲さんとは週1ぐらいでえっちなことをするようになった。
といっても、身体を触られて抜いて終わりだけど。
あ、でもキスは前よりしてくれるようになった。
八雲さんはオレによく「キス好きだね」って言ってくるけど、たぶん、八雲さんのほうが好きだ。
まあ、そういうわけでえっちはしてるけど最後までできていない状態が続いてる。
1回だけ、渋々、柳に相談したことがある。
その時に言われたのが「色気が足りないんじゃねーの?」だったんだけど、そんなのオレが一番よく知ってるから軽く小突いてやった。色気があるならとっくに使ってる。
兄ちゃんや矢吹さん、立花さんにも相談してみようかと血迷ったこともあったけど、すぐに正気を取り戻した自分を褒めたい。
それにしてもどうすれば八雲さんは最後までしてくれるんだろう?
理由はわかってる。オレがまだ18歳だからだ。
そりゃ成人してない子どもかもしれないけど、オレだって立派で健全な男子なので、抜くだけじゃ満たされない時が増えてしまった。
いくらオレのこと好きでも、オレで勃ってくれても、やっぱり男同士のえっちは難しいのかもしれない。
意を決したら即行動。
男同士のえっちをネットで調べ、薬局はまだ恥ずかしかったからネットでローションと大人のおもちゃをひっそりと購入。
届いたものを開封したときは、誰かに見られてるわけじゃないのにすごく恥ずかしくなった。
届いてからは夜な夜なお尻に指を入れる練習をしてたんだけど、お尻に指を入れるという未知の行為が怖くてめちゃくちゃ難航。
指1本入るようになったのは、練習を始めてから1ヶ月も経った頃だった。
入ったのはいいけど、異物感がすごくて気持ちいどころかちょっと気持ち悪い。
これじゃあ八雲さんもまだ安心してできないなって思ったけど、とりあえず1本入るようになったし大きく前進したと思うことにしよう。
そうじゃないとオレの心がもたない。
指1本入ったことだし、いつ何が起きても大丈夫なようにバッグにローションを潜ませるようになった。
スクールバッグにちょっとの重さと恥ずかしさを潜ませてから数週間後。
「ごめん、飲み会があったこと忘れてたから部屋で待ってて。長居はしない」
と連絡があったから、玄関のドアが開く音が聞こえるまで宿題したりスマホでゲームしたりテレビを観たりして過ごして。
「えっ、矢吹さん?」
「ごめん南、ちょっと八雲さん酔わせすぎた」
珍しくインターホンが鳴ったかと思えば、酔いつぶれた八雲さんを送り届けてくれたらしい。
「大丈夫なんですか?」
「今けっこう落ち着いてきてるから、適当に水飲ませてやって。あ、風呂は明日の朝な」
「わ、わかりました」
「あとこれ、酔わせたお詫びとお礼」
「お礼?」
「貴重な八雲さんを見られたお礼ってこと。今スマホに送ったから後で見てみな」
八雲さんを玄関に座らせた矢吹さんは「じゃ」と颯爽と帰って行ってしまった。
あの人のゴーイングマイウェイな感じ、少しは見習いたい。本当に少しだけ。
八雲さんをオレ1人で運ぶことは難しかったから、申し訳ないけどまた立ってもらって、ソファまで支え合って一緒に座る。
「はあ…ごめん、こんな情けないところ見せて…」
「オレ的には全然…むしろちょっと嬉しいって思っちゃいました」
「嬉しいような、嬉しくないような」
「あ、お水飲みますよね、持ってきますね」
酔わせすぎたっていうから少し身構えちゃったけど、ふつうに会話できてるし酔いの峠は越えたのかもしれない。
ちょっと、というか、だいぶお酒臭いけど、ふだんかっこいいところしか見せてくれないから、弱っている姿を見るのは嬉しかったり。
矢吹さんが珍しいものを見せてくれたって言ってたけど、それこそオレのセリフだったりする。
今度なにか甘いものでも買ってあげてもいいかな。調子に乗っちゃうから、手軽なコンビニスイーツだけど。
水と氷を入れたコップを片手に戻ると、八雲さんが床をじっと見ている姿が目に入った。
何を見ているのかと八雲さんの視線の先を辿れば、そこにはチャック全開のスクールバッグ。
「待って待って、八雲さん見ないで」
「……ねえ、これ」
「あー、もう、なんで見ちゃったんですか…」
「見たんじゃなくて、見えたんだけど」
「最悪……」
「それ、使いかけだったんだけど」
「……」
「けっこう減ってたし」
「……」
「もしかして、自分で慣らしてた?」
神様、一生のお願いを使うのでどうか時を戻してください。
お願いします。
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