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放課後ユーフォリア 2
俺は今、制服を着た南と一緒に映画館まで来ている。
いや制服のステータスってすごい。
今まで制服姿の南を見てなかったわけではない。
何回も何回も見てるけど、それは弓道場だったり俺の家だったりで、デートのときではなかった。
そもそも俺の家でのんびりすることが多いから、こういうどこかに出かけるデートはあまりしてきてない。
南の学校の制服はブレザー。
俺もブレザーだったのに、南が着ると可愛くて眩しく見える。
「八雲さん、観たいのこれ!」
南は俺の服の裾をちょんちょん引っ張り、輝かせた瞳が俺を捉える。
言ったら怒るんだろうけど、子犬を飼っている気分になって微笑ましい。
「ん。了解」
チケット売り場を見ると、平日の夕方だからかそんなに客は並んでなかった。
俺は南を適当に座らせて、チケットをささっと購入して戻ってくる。
「はい南」
「ありがとうございます。いくらでした?」
「いいよ。今日は南が頑張ったご褒美の日だから」
「え…でも、オレは八雲さんとデートできるだけでご褒美ですよ?」
「お前…引くほど可愛いな」
「ありがとうございます?」
「映画のチケット代ぐらい黙って奢られときな」
「……八雲さん、超かっこいい」
「あはは、ありがとう」
「キス…したくなったんですけど…」
上目遣いで遠慮がちにおねだりしてくる南の可愛さが暴力的に可愛い。
さすがにこの公衆の面前でキスはできないから、柱の陰まで南の手を引いて移動。
軽く周囲を確認してから、南の唇に自分のを合わせる。
さすがに舌を入れるまではできないから、下唇をちゅっと吸ってからすぐに離した。
「………好き」
「お前ほんと可愛いから押し倒したくなってきた」
「い、今はダメ」
「後でならいいんだ?」
耳元で囁いてやると、顔を真っ赤にして黙る。
南は耳が弱いから、だいたいこうしてやると大人しくなって従順になるのは付き合う前から気づいてたこと。
恥ずかしがる南が可愛くてついちょっかいを出してしまいたくなる。
顔をぽっぽさせてる南を促して、上映時間までの時間つぶしで俺の行きつけの喫茶店に向かった。
店に着いた頃には南もすっかり元に戻って、今は注文したパスタを美味しそうに食べている。
南の食べっぷりを見てると、やっぱり高校生は食欲がすごいって感心する。
「あ!オレ八雲さんに言いたいことあったの忘れてました」
「なに?」
「八雲さん目立ちすぎ。クラスの女子がすごい騒いでましたよ」
今日の校門で南を待っていたときのことを言っているのがすぐわかった。
パスタをもぐもぐさせながらちょっと不機嫌そうな顔をさせていて、エサを誰にも取られまいとするリスみたいで可愛い。
「あんまり目立たないようにと思って、洋服黒で統一してしたんだけど」
「八雲さんかっこいいから関係ないんですけど」
「そう?」
「むしろ黒1色を着こなして逆に目立ってたし……」
「南がかっこいいって思ってくれてるなら他は関係ないんだけどね」
「そういうことサラっと言っちゃう八雲さんほんとずるい!」
南は照れを隠すように、残りのパスタを一気にたいらげた。
本当にいじりがいがあって、俺の恋人は世界一可愛い。
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