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放課後ユーフォリア 3
喫茶店で時間を潰していた俺たちは、再び映画館に戻ってきていた。
トイレも済ませ、入場開始のアナウンスが流れてから劇場に入る。
上映終了間際の作品のためか、客の入りがまばらで少ない。
チケットに書かれている後方の席に座ると、近くに人はいなかった。
「ちょっと貸し切りみたいでいいですね」
「なに、誘ってるの?」
「な、なんですぐそうなるんですか!」
もう反応がいちいち大げさで面白くて可愛い。
しかも顔をちょっと赤くさせて、まんざらでもなさそうなところが尚更。
「この映画けっこう楽しみにしてるんで…その…そっ、そういうことしないでくださいよ…」
「お前……本当にそれで誘ってないんだよな?」
顔を赤らめて少し俯き、本人は無意識なんだろうけど腰もわずかに動かしながら言ってくる。
怖い。南まじ怖い。
初めて南のことえろく育てすぎたかなって少しだけ後悔した。
これから映画を観るだけなのに、こう、なんで火を焚きつけられないといけないんだろう。
南は俺のことを優しいとかかっこいいとか言ってくれるけど、俺も健全な男子大学生なわけで。
ここが映画館じゃなかったら、とっくにベッドに押し倒してる。
生き地獄とはこのことか…。
「わかったわかった。南が言うなら“そういうこと”はしない」
「……なんか含みのある言い方に嫌な予感しかしないんですけど」
「ほら、始まるぞ」
少し不服そうだけど本当に楽しみにしていたのか、すぐ前を向いてスクリーンに見入っている。
せっかく来たんだし、俺も映画に集中する。
映画を観てたら案外おもしろくて、すぐに世界観に入り込んでいった。
CMでやっていた人気ハリウッド俳優が主演のアクション映画で、展開も戦闘シーンもなかなか熱い。
でも、さっきの南が頭から離れない。
今南に触ったらどんな反応するんだろうとか、どんなことを言ってくるんだろうとか、そんなことを頭の片隅でぐるぐる考えてしまって。
映画に夢中になっている南の手に、俺のを重ねる。
南は一瞬驚いたようにこっちを見た。
俺は視線を合わせて「手だけ」と小声で言うと、少し恥ずかしそうに「手だけですよ」と返ってきてまたスクリーンに向き直る。
重ねてた手をゆっくり動かし、優しく包み込むように恋人つなぎに変えて。
南も俺の手の動きに合わせて手を動かす。
やっぱりまんざらでもなかったんだなと確信して、思わず笑みがこぼれた。
しばらく恋人つなぎをしていて、映画がクライマックスに入ろうとしているところで指を少し動かす。
南の手のひらや付け根、指から爪をゆっくり愛撫する。
指だけでも感じてきたのか、手がピクっと動き始めた。
南を盗み見ると、声を出さないように唇を噛みしめて我慢していて。
愛撫し続けていたら辛くなってきたのか、空いてる手で口元を押さえながらくふくふと声を我慢している。
もう、なんでこんなにえろ可愛く育ったんだろう。
俺の教育の賜物なんだけど、予想以上の成長のよさとスピードで喜んでいいいのか少しだけ複雑。
エンドロールが終わり場内の照明がつくまで、俺はずっと南の手を触り続けた。
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