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弓道教室成人組

今日は前に矢吹から誘われた飲みの日。 駅前で待ち合わせをし、俺が見つけた雰囲気がよさそうな居酒屋に来ている。 飲み始めてから1時間ほど経ち、みんなほどよくできあがってきてる。 「つか八雲さんさー、弓道場で深いのするの何回目だよ」 「なんで矢吹は7割の確率でキスしてるとこ目撃してるわけ?怖いんだけど」 弓道場でキスはもう何回もしているのだが、その度に矢吹に目撃されている。 いつもいないか確認してるつもりなんだけど、たまに矢吹のことをゴキブリなんじゃないかと疑うときがある。悪い矢吹。 「ひゅ~八雲さんまた南のこと襲ってたんすか!」 前髪をあげてピンで止めているのは立花昴(たちばなすばる)。 矢吹と同じ歳、学校で俺の後輩にあたる。 ムードメーカー的存在で、その持ち前の明るさで未成年組と成人組の橋渡しをしてくれている。 俺が南と話すようになったのも、立花がいてくれたからだと少し思ってる。本人に言うと調子に乗るから黙ってるけど。 「まあいいじゃないですか?あんまり頻繁にされると困るけど、あの八雲が随分と柔らかくなりましたからね」 と、しみじみと話してるのが銅右京(あかがねうきょう)さん。27歳。 この弓道教室を経営している人で、コーチや監督を担ってくれているすごい人。 右京さんは絵に描いたような日本男子で、普段着が着物。 俺が弓道を始めたのはこの人がいたから。 矢吹とか立花はガネさんって呼んだりするけど、俺には到底呼べないから2人のキャラがたまに羨ましい。これも絶対言わないけど。 「昔の八雲さんそんなにヤバかったんですか」 「矢吹がうちに来たのは2年前でしたか」 「ヤバイっていうか半分人間捨ててた感あった」 「立花、言葉には気をつけろよ」 「やだな八雲さん目がマジですよ」 今ではそんなことないけど、昔の俺は荒れてた。というより、人生がどうでもよかった。 生きている意味がわからなくかり、右京さんには大きな迷惑をかけていた。 そういう意味では、荒れてた俺に南がめげずに話しかけ続けてくれたことが、本当にありがたい。 「ふーん…まあ昔の八雲さんなんて興味ないけど」 こういうとき、場の雰囲気を変えてくれるのは矢吹だ。 本人はそういうのまったく気にしてないと思うけど、いつもありがたいと思ってる。 「弓道場でヤらなければいいんじゃない」 ………余計な一言をぶん投げてくるのも矢吹だ。 「え、場を和ませるための冗談で言ったんだけど……え?」 「いや最後までしてないヤってはない」 「八雲さん……声震えてるけど」 「やめて立花そんな目で俺を見ないで」 「ま、まあ…八雲が元気になってよかったですよ」 「右京さんは白目剥きながら言わないでください」 バカ騒ぎは日付けが越えるまで続き、学生3人は仲良く二日酔いで右京さんに看てもらいながら弓道場で死んでいたのだった。

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