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雨の中の熱
「今日も雨ですね」
「今日も雨だなぁ」
ベッドに寄りかかってる八雲さんの脚の間に入って、昨夜から降り続けている雨空を2人でぼんやり見てる。
オレも八雲さんも雨はそんなに好きじゃない。
なんか力が入らないっていうか、やる気がなくなるっていうか。
特に八雲さんは、雨をけっこう本気で嫌っている、気がする。
今の八雲さんのことはなんでも知ってる自信あるけど、実は昔の八雲さんのことはほとんど知らない。
雨の日になにか嫌なことがあったんだと思うけど、怖くて聞けてない。
八雲さんから言ってこないってことは、聞かれたくないってこととイコール。
いつか八雲さんが話してくれるまで待つつもり。
だからこうして何もせずにグダグダすることがほとんど。
「梅雨明けまだですかね」
「一昨日梅雨入りしたばっかりだからなぁ…」
「早く晴れて夏休みになんないかな」
「その前にテスト忘れるなよ」
わ、そうだよ忘れてた。
中間は八雲さんが付きっきりで教えてくれたから、自分史上最高の点数を叩き出した。
先生にも家族にも八雲さんにも誉められたし、期末はなんとか維持したいところ。
いやいや、テストの前にビッグイベントあるの忘れてた。
八雲さんの誕生日もうすぐだよ。
八雲さんて自分のことになると無頓着になったりするから、たぶん忘れてる。
なにかサプライズでもしようと、密かに心に決めた。
「俺さ――雨嫌い」
「……知ってますよ。てるてる坊主作ります?」
「はー…お前なんでそう可愛いことをすぐ言うの」
八雲さんがオレの肩口に額を当てて、ぐりぐりってしてくる。
こうしてくるときは、オレにすごく甘えてる証拠。
辛そうに雨が嫌いって言うから、理由をオレに言おうかたぶんまだ迷ってるんだ。
話してくれるのは嬉しいけど、そんな辛そうな八雲さんは見たくない。
だから話を逸らしちゃった。
オレたちにはまだ時間がたくさんあるし、ゆっくりゆっくり待とうと思う。
「わは、八雲さんくすぐったい!」
「んー…南あったかい」
八雲さんが首元に唇を寄せ、ちゅっと吸い上げる。
するっと手が服の下に入り込み、脇腹や腹筋を撫で上げてきた。
「んっ、ちょっと、八雲さん…」
「ごめん…しないから、南の熱を感じたい」
「オレも、八雲さんの熱感じたい」
「最高…」
優しくオレを抱き上げてベッドに下ろす。
お互い向き合うように寝ると、時間の許す限りお互いの熱を感じ合った。
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