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バカップル目撃情報

あ、どうもこんにちは。 矢吹です。 今日はみんなに、俺が見て糖尿病になりかけたあのバカップルの話をしようと思う。 ネタはいくつか上がってるんだけど、今日はとりあえず昨日のスーパーで見た話だけで勘弁してほしい。 俺は昨日の夜…日付けが変わってすぐだったから、厳密に言うと今日。風呂に入ろうとしてシャンプーがなくなってたことに気がついた。 面倒くさかったけど、仕方ないから24時間営業のスーパーに行くことにした。 コンビニのほうが近いけど、ちょっと高いし。 チャリをかっ飛ばしてスーパーまで来て、長居するつもりはなかったから真っすぐ日用品売り場に向かった。 「ちょっと、そっちじゃないでしょ」 「なんでですか?オレはこっちがいい」 っていうそこそこ大きい声で言い争いしてるのが聞こえた。 しかもめちゃくちゃ聞き覚えのある声。 まあ名前を言わなくてもわかると思う。そう、あのバカップルだ。 2人が言い争ってるのはなかなかレアだから、面白そうと思って陰からこっそり見てみることにした。 見れば、2人の手の中にそれぞれ違う柔軟剤がある。 「だから、オレは八雲さんが使ってる香りがいい」 「ダメ。南はフルーツ系の香りじゃないと俺が落ち着かない」 「そしたらオレだって!八雲さんはこっちの自然な香りじゃないと落ち着かない」 「それはテキトーに買ったやつだからやっぱりダメ」 ほらな?すごいバカップルだろ? 柔軟剤の香りで揉めてるとかお花畑にも程があるわ。 しかもこのバカップルは基本他人に無関心なくせに、相手のこととなるとウザいぐらい頑固になる。 思い出しただけでも砂糖吐きそう。 「わかったこうしよう」 「……譲りませんよ」 「俺のつけてる香水を南の誕生日にプレゼントしてあげる」 「……あの紅茶の?」 「そう、紅茶の」 「わかった」 いやいいんかい! 思わず声出そうになったのを頑張って堪えた。誉めてほしい。 いいんかい!それで! 「なんか…喧嘩腰になっちゃってごめんなさい」 「おあいこだろ?」 「嫌いにならないでください」 「ふは、なるわけないだろ。ほら、仲直りしよ」 ここで2人の顔が近づいて……。 もう言うまでもないな。ほんと言うまでもないわ。 けっきょくこうなるんだわバカップルは。 さすがに糖尿病が心配になってきた俺は、音もなくその場から立ち去った。 バカップルのせいでシャンプーもコンビニで買う羽目になったから、次会ったとき盛大に茶化してやろうと心に誓ったのだ。

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