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スウィーティー・バースデー 2
ちょっと狭い台所に、南と2人肩を並べて立つ。
ご馳走は2人一緒に作るのが、いつの間にかお約束になってた。
ご馳走といっても豪華なものではなくて、その時食べたいものを作るから和洋中ゴチャゴチャになることも珍しくない。
南はチャーハンの気分らしくて、フライパンに油を引いて豪快に食材を投入している。
こういうところも元気な男子高校生って感じがして可愛い。
「八雲さんは何作るんですか?」
「どうしようかなぁ。ラザニアとグラタンどっちがいい?」
「両方!」
「ん。食べ盛りで作りがいがあるよ」
目をキラキラさせながら両方がいいなんて言うから、断れるわけがなくて。
両方作るのは手間だし少し面倒だけど、南のお願いだから全然気にならない。
これが例えば矢吹だったら「は?」って言い返してたな。
かと言って明日もお互い学校があるし、さっさと作らなければ。
しばらく会話がなく、お互い集中して料理を作っていた。
どれぐらい時間が経ったか、南の声で集中の糸が切れた。
「いい匂い!」
「焼けてきたね。サラダもほとんど出来たし、そろそろ並べようか」
早く食べたいですねってにっこり笑う南が可愛くて、もうそれだけで幸せだし誕生日プレゼントもいらないって思える。
チンっというオーブンの音が響き、焼いていたラザニアとグラタンを取り出す。
香ばしくて美味しそうな匂いが部屋に広がった。
南は顔を近づけて匂いを嗅いでいる。
嬉しそうにしっぽをブンブン振っているのが見えるみたいだ。
2人で食卓に並べてから座って、手を合わせていただきますをする。
統一感のないメニューだけど、どれも美味しくて手が進む。
南も次から次からへと食べ物を口に運んでいる。
「八雲さん!ラザニアもグラタンも美味しい!」
「そっか。南が喜んでくれてよかった」
「八雲さんの誕生日なのにオレがお祝いされてるみたい…すいません」
「あはは、なんで謝るの。南が嬉しそうにしてくれると俺も嬉しいから」
「でも…」
「そんな顔するなって。そうだな…じゃあ、あとでおもてなししてほしいかな」
「おもてなし?」
「そう、おもてなし」
不思議そうな顔をする南ににっこり笑いかける。
何をするのかわかってないけど、少しだけ引きつったのがわかった。
「八雲さんのその笑顔ほんとかっこいいけど、だいたい良くないこと考えてるのはわかる」
「なに?期待してるの?」
南の耳元で囁いてやると、バっと耳を手で抑えて顔を真っ赤にさせる。
「いちいちそういう初な反応されると優しくできないんだけど」
「ちょ、待って八雲さん!まだ心の準備がっ」
「準備なんていらないでしょ?」
「んむっ!?…っ、ふぅ…」
俺の胸を押し返して抵抗してくる南の腕をどけて、腰を掴んで引き寄せて唇を奪った。
噛みつくようにキスをして、舌を絡めとる。
付け根を丁寧に舐めてやると、抵抗してた南が大人しくなって腰を揺らし始めた。
南がもっとってねだる直前にちゅ、と音をたてて唇を離す。
「そんな残念そうな顔しなくても、後でちゃんと味わうから大丈夫」
「ん…って、別に!残念がってないですし!」
「あは、ほんと可愛い」
最後に額にキスを落として、冷めてしまったご馳走を食べ始めた。
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