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スウィーティー・バースデー 10

オレ、けっこう興奮してるし生クリームプレイいいかも…とか思い始めてる。 僅かに残ってた理性もどこかに行っちゃって、今はもう喘ぐことしかできなくなってる。 初めてしたときにも思ったけど、八雲さんってすごく手馴れてるんだよな…オレは八雲さんが初めての相手だけど、きっと違うんだと思う。 オレは何番目ですかって聞きたいけど、でも怖くて聞けてない。 「南?どうかした?」 何番目なんだろう…って考え始めたら少し落ち込んじゃって。 そんなオレのちょっとした変化に、八雲さんはすぐ気づいてくれる。 「ちょっとだけ考え事してたんで、大丈夫です」 「――嘘。南、思ってることが顔に出てるって気づいてる?」 変な質問で八雲さんを困らせたくなかったから少しはぐらかしたんだけど、やっぱり見透かさる。 ソファーベッドに寄りかかってた身体を、優しい手つきで一度起こしてくれる。 おでこをくっつけて「どうしたの?」って、これもまた優しい声で聞いてきてくるから、嘘が言えるはずもなく。 言っちゃいたいけどやっぱりまだ抵抗があって。 でも八雲さんの黒紅の瞳が、逃がさないって言ってるようにしか見えない。 なかなか口に出す勇気がわかなくて、しばらく言うか迷ってたら八雲さんが痺れを切らしたようにため息をついた。 「何を迷ってるかわからないけど――南の全部を受け入れる覚悟はとっくの前からできてるし、何より少しでも不安なことがあるなら取り除いてあげたい」 「八雲さん……」 「でも、南がどうしても言いたくないなら無理して聞かない」 どこまでもかっこいい八雲さんずるい。 こんなこと言われたら、思ってること言うしかないじゃん…。 「あの、ほんとにくだらないことで……」 「うん。いいよ」 「ちょっとウザイって思うかも」 「それぐらいが可愛げがあるから」 八雲さんが両手でオレの顔を包んでくれる。 冷え性だから少しひんやりしてるけど、八雲さんの優しさがいっぱい伝わってくる。 八雲さんのこと嫌いになることなんて一生ないんだろうなって、素直に思った。 「八雲さんって、」 「うん?」 「あのっ…!」 「ゆっくりでいいから」 もうやだ八雲さんがイケメンすぎて泣きそう。 もうどうにでもなれって訳もわからず開き直って、切腹する勢いで口を開けた。 「八雲さんは何人目にオレを抱いたんですか!」 言った。 言ってしまった。 本当に勢いだった。 ちょっとスッキリしたけど、八雲さんの反応は怖くて見れない…。 八雲さんの様子を伺ってみると、びっくりしたように固まってた。 「あの……八雲さん……?」 恐る恐る名前を呼ぶと我に返ったようにはっとしたと劣ったら、クククって笑い始めた。 「わ、笑い事じゃないですよ!オレけっこう本気で――」 「あはは!うん、そうだよな。ごめん」 「もう!オレは八雲さんが初めてだからちょっと気にしてたんですよ」 「だからごめんって。南のいろんな初めてを貰えて嬉しいよ」 八雲さんは笑いから出た涙を拭う。 こんなに笑われるなんて、あんなに悩んでたのがアホらしく思えてきた。 「質問に答えると、正直覚えてない」 「覚えてない?」 「んー…。言ったら絶対引かれるし、幻滅させちゃうことになるよ」 「そんなの、オレだって八雲さんの全部受け入れる覚悟はずっと前からできてるから平気です!」 八雲さんは困ったように笑う。 その困り顔ですら様になってるから、イケメンってほんとにずるい。なんでも許しちゃいそうになる。 「俺さ、まあいろいろあってグレて、けっこうヤンチャしてた時期があったんだ」 「路地裏で助けてもらったとき?」 「そうだね、あの頃がピークだったかも。で、自分でも引くぐらい女を取っ替え引っ替えしてて」 「……八雲さんの口から女を取っ替え引っ替えなんて言葉が出るとは思いませんでした」 何人かと関係は持ったことあるんだろうなって気はしてて、数人ぐらいかなと思ってたんだけど…。 次元が違う話になりそう。 「隠しても仕方ないから言うけど、1日だけの関係とかもあったりして」 「1日だけ……」 「な?引くだろ?」 「引くっていうよりかは、あの八雲さんがそこまでヤンチャしてたとはって感じです」 「……初めて本気で好きになった相手が南でよかった」 こっ恥ずかしいセリフを、この人はいつも本気で言うんだ。 覚えてないぐらいしてたってことはたしかに引くところもあったけど、八雲さんがこんなに愛してるのはオレが初めてっていうのを聞いて安心した。 そしたら八雲さんのことがたまらなく愛しくなって、キスをおねだりする。 「俺がこんなに愛す人は、後にも先にも南だけだから」 なんてとんでもなく甘いセリフを言って、深い深い口づけをしてくれた。

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