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スウィーティー・バースデー 14
キッツイ。
死ぬかと思った。
けっきょく八雲さんに抱かれたんだけど、1回だけだったんだけど、もう最初からアクセル全開で来られて意味が分からなかった…。
今はもう後処理とかも全部終わってゆっくりしてるけど、つい数時間前の情事を思い出すと軽く逆上せそう。
「八雲さん、もう忘れないうちにプレゼント渡しますね」
「さすがにもうしないよ」
「嘘つかない人ってわかってるけど性欲に関してはちょっと…」
「まじか…本当に気をつけよ…」
オレも八雲さんに流されないようにしなきゃ。
でも本当に八雲さんだからって理由だけでなんでも言うこと聞けちゃうからなぁ…鬼にならないとオレの身体が持たない、っていうのはつい最近わかったこと。
「プレゼント、開けていい?」
「あ、ど、どうぞ…!」
「ふは、なんで急にどもってるの」
「だってなんか…緊張します…つ、付き合ってから初めてのプレゼント、だし」
「南からの贈りものはなんでも嬉しいから大丈夫だよ」
そうやって八雲さんは、イケメンにだけ許されたセリフと笑顔を余裕でやってのける。
八雲さんの細くて大きな手が、プレゼントのラッピングを解いていく。
喜んでもらえるかの緊張と、相変わらずやらしい手つきで心臓がうるさい。
直視できなくなって、訳もわからず自分の手相を見る。
「あ、れ?」
八雲さんが疑問の声あげて、ちょっと冷やっとする。
実は八雲さんリクエストのシガレットケースの他に、迷いに迷ってようやく買えたピアスもプレゼントした。
シンプルなシルバーのピアス。
普段シックな服装が多い八雲さんに絶対似合うと思うんだけど…。
「ど、どうしました?」
「シガレットケースだけだと思ってたから、ちょっとびっくりして」
「なんか、やっぱり自分で考えたものもあげたくて…バイト代も思ったより入りまして…どうですか…?」
「すごい嬉しいよ」
「本当ですか!?」
「もちろん。ありがとう、どっちも大切にる」
「八雲さん、ピアス今つけてください。見たい」
「うん。ふふ、いいよ。待ってて」
少し長い髪を耳にかけて、慣れた手つきでピアスを付ける。
髪を下ろせば、少し耳が隠れるけどピアスはかろうじて見えた。
髪が揺れ動く合間から見えるピアスがかっこいい。
「オレの目に狂いはなかった…」
「あはは、何それ。でもこれ本当に嬉しい」
「穴開いてるのにピアスしてなかったんで…喜んでもらえてよかったです」
「やんちゃしてた時に開けたものだし、ピアスは昔の俺と一緒に捨てた」
「じゃあ、八雲さんのピアスは全部オレが買います」
「それはまた楽しみが増えるな」
本当に嬉しそうに八雲さんが笑うから、少しだけ胸がチクっとした。
ピアスを贈る意味って、肌身離さず付けていられることから独占欲を表すらしい。
八雲さんはオレのっていう目で見てわかる証が欲しくって。
じゃあわかりやすくリングにしろよって話なんだけど、さすがに重いし。
でも、前から耳に穴開いてたのは知ってたしピアス見たいと思ってたし…。
これぐらいの独占欲だったら、いいよね?
八雲さんが愛おしそうにピアスを撫でるから、やっぱりこんな証いらなかったのかもなって思うけど。
午後にはオレの家に向かいながら途中の公園でのんびりして、つい昨日の熱い情事の後とは思えないほど穏やかな時間を過ごす。
これから八雲さんの誕生日には毎年ピアスをあげようと心に決めて、早く来年にならないかなーとか考えながら眠りについた。
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