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オモイピアス

大学の講義が終わって、家に帰ってもすることがなくて暇だなと思った俺は弓道場に足を運んだ。 ついこの前の誕生日のとき、いい加減なんとかしないとまずいと思ったから、自分への戒めも兼ねてる。 弓道場に入ると、右京さんが箒を持って掃除していた。 近づけば俺に気がついて、笑いかけてくれる。 「こんにちは」 「こんにちは。今日は八雲だけですか」 「はい。南は試験期間で」 「そうでしたか。今いるのは私と八雲だけなので、ゆっくりできますよ」 「だろうなと思って来ました」 「煩悩払いですか?」 「あはは、そんなところです」 やっぱり右京さんも俺のことをよくわかってくれてる。 いや、右京さんだけじゃない。矢吹も立花も、なんだかんだ言ってみんな俺の理解者。 右京さんに頭を下げて、着替えるために更衣室まで来た。 部屋に誰もいないときってなんか特別な感じがするのは、学校の教室だけじゃないんだなって。 いつもここには誰かしらいることが多いから、変な感じ。 でも静かな更衣室けっこう落ち着く。 ひとりでのんびり着替えて、水筒とタオルを持って戻る。 右京さんが準備をしててくれて、すぐに始められる状態になってた。 「右京さん、ありがとうございます」 「いいえ。久しぶりにゆっくりと弓を射る八雲が見たかったので」 「こうして右京さんと2人で話すのも久しぶりですね」 「南に嫉妬されちゃいますかね」 そう言って、右京さんは笑いながら自分の耳たぶを指差した。 本当によく見てる人だ。 俺の髪少し長めだから、こんなにすぐ気づかれるとは思ってなかった。 「そんなにすぐわかりますか…」 「南には悪いですけど、付き合いが一番長いですからね」 そうなんだよな。 実は右京さんと付き合いはすごく長いし、本当にお世話になった。 「南も粋なことするようになりましたね」 「日々成長する南に超されないか 不安ですよ」 「それにしてもピアスとは…南らしい」 「独占欲、でしたっけ。右京さんは重いって感じます?」 「プレゼントに重いも軽いもないですよ。相手のことを想って選ぶことに意味があると思いますから」 そうやって笑う右京さんは、当然だけど俺より大人で。 こういう人間になりたいなって思わせてくれる。 南から貰ったものでいらないとか思ったことは一度もない。 どんなに小さなものでも一生の宝物だし、全部に南の想いがそれぞれ詰まってると思うと、尚更。 「まあ、重いって言われたら俺何するかわかんないですし」 「どちらかというと南のほうが重いものを背負ってますね」 「そうかもしれないです」 やっぱり俺のほうが年上だし、セックスもリードしてる側だから主導権は俺が持ってるって南は思ってるかもしれないけど、実は違う。 本当は南が俺の手綱を持ってる。 南はそのことに全く気がついてないみたいだけど。 俺は右京さんから弓を受け取って、夜になるまでただひたすらと射続けた。

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