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夏祭りに影とりんご飴 1

八雲さんの試験期間も無事に終わって、一足先に夏休みに突入してたけど、これでやっとお互い夏休みになった。 夏休みに入って早々だけど、地元でメディアも来るようなそこそこ大きな祭りが、今日と明日で開催される。 もちろん今までも夏祭りは行ったことあるけど、今年はいつもと違う。 「ちょっと悠太、動かないの」 「いでっ!」 なんてったって、今年は浴衣を着て夏祭りに行くから! 八雲さんも浴衣を着て来てくれるって言ってた。 あんなイケメンに浴衣とかそれなんて少女マンガ?って聞きたくなる。 それでソワソワしてたら案の定、着付けをしてもらってた母さんに怒られた。 久しぶりに尻を叩かれた気がする…地味に痛い。 「お父さんのだからサイズが心配だったんだけど、大丈夫そうね」 祭りに浴衣を着て行きたいってぼやいてたら、父さんが実家に連絡してじいちゃんが郵送してくた。 父さんの浴衣は灰色で、柄は少なめ。 オレには少し早いデザインな気がする。 「ねえ、変じゃない?」 「変だったら剥いでるから安心しなさい」 「せめて脱がすって言ってよ…」 オレのこと剥いでいいのは八雲さんだけだし…とはさすがに言えない。 両親は八雲さんと付き合ってることは、さすがにまだ知らない。 オレの家らそういうのに全然うるさくなくて、好きなようにやれって育てられてきた。 だから打ち明けても受け入れてくれるだろうし、たぶんだけどそんなにビックリしないと思う。 「ほら、できたわよ」 着付けしてくれた母さんが、ちょっと離れてオレの全身を確認する。 「どう?」 「1ミリの乱れもない完璧な着付けね」 「そっちじゃないんだけど」 オレの母さんちょっと変でしょ? 飽きないけどたまに疲れるんだよね。 自分の浴衣姿が見たくて、母さんから離れて玄関にある全身鏡の前に立つ。 少しだけ大きいかなって感じだけど、うん。似合ってるかも。 浴衣の袖を広げてみたり、後ろ姿を確認してみたりする。 うん、うん、変なところはなさそう。 八雲さん絶対に浴衣姿似合うから、それに見劣りしないようにしたい。 「こんにちは」 しばらくそこで女子みたいに自分の姿を確認してたら、玄関のドアが開いて八雲さんが入ってきた。 「や、くもさん!?」 ヤバイ鏡の前でめちゃくちゃ確認してたの絶対見られた。 八雲さんの視線が痛くて、袖で顔を隠す。 「だからさ…そういう可愛いことされると堪らないんだって…」 「だ、って」 「もう…キスしたくなる」 あ、八雲さんの目つきが変わってスイッチ入った。 少しずつオレに迫ってくる八雲さんは、藍色の無地の浴衣を着ていて。 うわ、超シンプルなデザインなのに着こなしてるヤバイやっぱり八雲はん超イケメン…てか待ってここ玄関じゃん親いるじゃんでも流されてもいいかな。 なんて頭の中でグルグル考えてる間に、唇にキスを落とされた。 「顔真っ赤」 「仕方ないじゃないですか…」 八雲さんの手がオレの頬に添えられて、また顔が近くなってきて。 オレも少しその気になって、瞳を閉じていつでもどうぞっていう状態。 八雲さんの吐息が近づいてきて、もう少しってところで―― 「八雲くんいらっしゃ~い」 「こんにちは。お邪魔してます」 空気読めよババァ!って思わず叫びそうになったのを堪える。 せっかくいい雰囲気になってたのに、ほんとブチ壊してくれる。 「八雲くんは何着ても似合うわね~」 そりゃ八雲さんなんだからなんでも似合うに決まってるだろ! 「とんでもないです。悠太くんも似合ってますよ」 「馬子にも衣裳ってこのことよね」 「母さんちょっと黙っててくんない!?」 「そんなことないですよ。大人っぽくて可愛い感じが」 「もう!八雲さん好き!」 「貴方たち今日も仲いいわね」 仲!?めちゃめちゃいいよ! なんならラブラブだよ! もう早く出掛けたい…ここにいたら母さんがうるさくてしょうがないし、八雲さんとイチャイチャできないし。 チラっと八雲さんを見ると、楽しそうに母さんと話してるから邪魔できない。 「なんだ、騒がしいと思ったら八雲くん来てたのか」 「はい。お邪魔してます」 ほら!父さんまで来ちゃったじゃないか! 兄貴まで来たら絶対にめんどくさい。今は出掛けてるからいいけど、帰ってくるまでになんとしてでも行かないと。

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