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夏祭りに影とりんご飴 8
目が覚めると、そこは見慣れない場所だった。
頭がぼーっとしてて、知らない場所だっていうことしか考えられない。
目を覚ます前のことを思い出そうと、頭を目一杯働かせる。
そうだ。
りんご飴を食べながら八雲さんを待ってたら、山本と会って逃げようとしたんだけどダメだったんだ。
八雲さん今ごろどうしてるかな…。
いや、考えなくてもわかる。必死にオレのこと探し回ってるに決まってる。
スマホが盗られてないか淡い期待を持って探したけど、まあ当然あるわけがなくて。
不幸中の幸いは、拘束されずにいること。
ゆっくり起き上がって、周囲を観察してみる。
「いっつ…」
山本に一発入れられたお腹が痛む。
お腹が痛いとめちゃめちゃ体調悪く感じるんだよなぁ。
オレはお腹を擦って気を紛らわせてみるけど、痛いものは痛い。
とにかく、ここから脱出しなきゃ。
目がまだ暗さに慣れてなくて、何があるのかいまいちよくわからない。
そもそもここはどこなんだろう。
場所どころか、時間もよくわからない。
八雲さんなら、絶対助けに来てくれるはず…。
そこまで考えて、だめだめって首を振る。
いつも八雲さんに頼りっぱなしじゃダメだ。
自分の顔を叩いて、奮い立たせる。
よしって動き出した瞬間、まあタイミングの悪いことに山本が入って来た。
「お、なんだ元気そうじゃん」
「やま、もと…」
山本はなんの躊躇いもなくオレの方に歩いてくる。
無言の圧力に気圧されて、近づいてくるたびに後ずさってしまう。
「そんな逃げることないのに」
って言いながら含みのあるニヤニヤした顔を信じられるわけがない。
何をさせるかまったくわからないけど、良くないことが起きるんだなってのはさすがに感じ取れる。
「小学生のときはいじめたりなんかして悪かったな」
「…なに、まさかそれを謝りに来たわけ?」
弱気になってられないと思って、小学生の時じゃありえない反抗的な態度をとる。
でも思ったより自分の声は震えてて、我ながら情けないと泣きたくなった。
山本もオレが反抗的な態度をとるとは思ってなかったらしく、一瞬動きを止めたあとクツクツと笑った。
「南も言うようになったんだな。いや、そういう反抗的なの好きだよ」
「別に…山本に好かれても、嬉しくない」
「ふぅん?」
山本は一気に距離を詰めてきて、もう本当に嬉しくないけど壁ドンされる。
体もグイって近づけてきて、吐息がかかるぐらい顔が近い。
「その態度がどこまでもつか楽しみだよ」
「何言って――」
言い切る前に、山本にキスをされる。
「んっ!?」
訳がわからなくて気持ち悪くて、山本の胸を全力で押し返すけど全然動かない。
背後の壁にしっかり押さえつけられてるせいだ…。
オレだって人並み以上に運動できるし、決して貧弱ってわけではないのに。
八雲さん以外からされるキスが、こんなに嫌だなんて。
そんなオレの心とは裏腹に、山本はオレの唇をこじ開けようとしてくるのを必死で阻止して。
そしたら山本の手がオレの浴衣の内側に伸びてきた。
ちょっと待って!
本当に何がしたいの!?
山本の腕を掴んで侵入させないようにしてるのに、やっぱり力に勝てない。
唇が塞がれて鼻でしか息ができないから、頭がぼんやりしてくる。
腕に力が入らなくなってきたところを見計らって、ついに侵入を許してしまう。
「んーっ!」
そわそわと脇腹や腹をまさぐられたあと、驚くことにその手は乳首のほうまで伸びてきた。
「ひ、ぁ!?」
「!……へぇ」
八雲さん以外に触られてるのに、感じてしまった自分が憎い。
思わず出た声に泣きたくなったし、その際に飽いてしまった口の中に舌の侵入まで許してしまった。
くちゅくちゅと汚い音を響かせてキスをしてくる。
呼吸が苦しくなって、認めたくないけど山本のキスの上手さにだんだん力が抜けていって。
唇が離れてやっと解放されたかと思えば、山本は懐から液体の入った小瓶を取り出した。
蓋を開けてグイっと口に含んだあと、あろうことかまたオレにキスをしてきて、その液体を流し込まれる。
「んぅ…んーっ」
「けっこうヤバイかも」
全部飲まされたあとも山本のキスはしつこく続き、悔しいけどその巧みな舌使いに翻弄されていった。
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