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夏祭りに影とりんご飴 9

ちょっと待って! 本当に何がしたいの!? 山本の腕を掴んで侵入させないようにしてるのに、やっぱり力に勝てない。 唇が塞がれて鼻でしか息ができないから、頭がぼんやりしてくる。 腕に力が入らなくなってきたところを見計らって、ついに侵入を許してしまう。 「んーっ!」 そわそわと脇腹や腹をまさぐられたあと、驚くことにその手は乳首のほうまで伸びてきた。 「ひ、ぁ!?」 「!……へぇ」 八雲さん以外に触られてるのに、感じてしまった自分が憎い。 思わず出た声に泣きたくなったし、その際に飽いてしまった口の中に舌の侵入まで許してしまった。 くちゅくちゅと汚い音を響かせてキスをしてくる。 呼吸が苦しくなって、認めたくないけど山本のキスの上手さにだんだん力が抜けていって。 「っ…んぅ…ふ…」 本当に嫌なのに、だんだん感じ始めてる自分がいることに死にたくなる。 こんなヤツ今すぐ殴って八雲さんで上書きしたい。 胸の突起も軽く転がされたり突かれたり、緩急つけていじられる。 「あっ、も…やぁ…やめっ…」 「だったら腰揺らすんじゃねーよ、この淫乱」 「ひあっ!?」 山本が股の間に膝をぐっと入れてきて、突然の刺激に思わず高い声が出た。 意識しないようにしてたのに、もう1度触られちゃったら我慢できなくなる。 下半身がビリビリし始めて、立つことがままならなくなったオレはずるずるとその場に座り込んだ。 はだけた浴衣を寄せて、肩で息をしながらもう触るなって視線で訴える。 「あーあ。命令だから仕方なくって感じだったのに、これだとハマっちゃいそうだわ」 参ったと言って、山本は頭をガシガシ掻く。 っていうか、上からの命令ってなに? なんでオレなわけ? いや、それよりハマっちゃいそうって!? なんか…よくわかんないけど、とにかくオレが思ってる以上に事態は深刻そう。 ここまでくると、生きて帰れるか心配になってくるレベルだ。 「なに、何もわかってませんって顔してるな」 もう意味がわからなくて頭と一緒に目もぐるぐるさせてたら、それに察したのか山本が驚いたような声音で話しかけてかた。 ここで素直にわからないって言うのも癪だったから、「さあ」って短く返した。 「いやーでも探せって言われてたヤツが、まさか小学校んときの知り合いだとは思わなかったわ」 まさかとは思ってたけど、これって八雲さん絡みの事件じゃ…。 八雲さんが過去のことをオレに隠してるのはとっくに気づいてるし、昔やんちゃしてたみたいだから不良のグループとか…わかんないけど、そうじゃないかと思った。 「……なんでオレなの」 「なに、お前まさか何も知らないでアイツと一緒にいるわけ?」 アイツ、は間違いなく八雲さんだ。 なんだろう、やんちゃしてた頃の因縁の相手がいるとか? そしたらオレは八雲さんを誘き出すための餌、になるのかな…。 頭をぐるぐる働かせて考えても、けっきょく全部憶測でしかなくて。 わかるのは、八雲さんのこと全然知らないんだなってことだけ。 「その様子じゃマジで何も知らないみたいだな」 「知らないけど…言ってくれるまで、待つ」 「健気だことで」 そう言って山本はこの部屋から出て行こうとする。 てっきり何かされると思ってたから、拍子抜けというかなんというか…助かったことは嬉しいけど。 「今日は見せしめだけっつってたからな、上が」 「今日は…」 「そう、今日はな」 また拉致る計画でも立てるような口振りに、身体が震えて冷や汗が流れる。 山本は出ていく前にオレのほうを見ると、にやりと笑った。 「その熱の処理、手伝ってやろうか?」 一瞬なんのことを言われたのかわからなかったけど、視線が下の方に向いてることに気がついて慌てて股間を抑える。 もう、絶対に八雲さん以外に触らせない。 キツく睨んでも、山本は余裕そうな顔をしていて。 「今度はいっぱい遊ぼうな」 なんて身の毛もよだつセリフを言いながら消えた。 山本がいなくなった緊張感が一気にほどけて、がっくり脱力する。 脱力して気づいたけど、たしかに熱が、ヤバイかも…。 いつもよりドクドクと脈打ってて、身体の芯から熱が放出されてる感じ。 「んっ…は、」 イきたい。 はやく楽になりたい。 でもさっき山本に触れられたところの感触がはっきり残ってて、八雲さんで上書きされないままでいると吐きそうになる。 オレはその場に横になって、熱が早く治まるようにと八雲さんに来てほしいと願いながら目を閉じた。

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