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夏祭りに影とりんご飴 10
どれぐらい時間が経ったんだろう。
「――み!」
微睡みのなか、遠くの方で八雲さんのオレを呼ぶ声が聞こえてきた。
夢か現実かわからないし、体の熱はけっきょく引かないし、熱あるみたいに頭もぼやっとする。
少しでも動くと、その僅かな刺激でイきそうで。
冷たかった床のコンクリートも、今じゃ自分の熱で生温い。
「――なみ!――南!」
八雲さんの声が真上から聞こえる。
頬にひんやりした手がそっと添えられて、八雲さんの手の感覚だっていうのがわかった。
目を開けなくてもわかる。
この手の温度とか大きさが、紛れもなく八雲さんのものだ。
さっきまであんなに辛かったのに、八雲さんがすぐそこにいるってことがわかった瞬間、身体が少し動くようになった。
もう今すぐ八雲さんが欲しくて、ねだるように浴衣の襟元を掴んだ。
八雲さんはすぐ察してくれたのか「後でな」って言うと、立ち上がって銅さんの名前を呼ぶ。
「右京さん」
「はい」
八雲さんは一言二言耳打ちしたあと、銅さんの足音が遠ざかった。
銅さんも探してくれたのかな…後でお礼言わなきゃ。
「南…ごめん…」
本当に申し訳なさそうに頭を下げて、優しく抱き締めてくれた。
八雲さんは汗ばんでて息も切らし、心臓が脈打ってる。
オレのこと走り回って探してくれたんだなっていうのがわかって、その嬉しさと安心感とさっきまでのことがフラッシュバックして、涙が溢れてきた。
「八雲さん……」
「遅くなって本当にごめん…とにかく、今はここを出よう」
オレが返事するよりも先に、ひょいと軽くお姫様抱っこをされる。
この時は羞恥心なんかなくて、八雲さんの首に腕を回して甘えた。
連れてこられた場所から出ると、わりと近いところからお祭りの喧騒が聞こえてくる。
どうやら山車とかを保管する所にいたらしい。
山本はどうやってこんな場所に入れたんだとか思ったけど、触られた不快感を思い出してすぐに考えることをやめた。
八雲さんを全身で感じようと意識したら、もう我慢できなくなって。
「八雲さん…あつ、い…」
「だめ南…もう少し頑張って」
「も、むり…たすけて」
ずっと堪えてたから、けっこう限界が近い。
さっきから下着が濡れてて、浴衣にも少し広がり始めてる。
「南……」
八雲さんの瞳が欲望と葛藤で揺れだした。
理性を崩すまで、もう一押し。
「おねがい……八雲さん」
人目を気にしてられないほど辛くて、八雲さんの首筋に吸い付く。
汗の塩気がじんわり広がって、オレの興奮も最高潮になる。
「んんっ…ぁ…」
山本に飲まされた液体って、媚薬かも。
首筋に吸い付いただけで気持ちよくなっちゃって、ビクビク身体が震える。
「っ…どうなっても知らないからな」
落ちた。
オレは柄にもなく舌なめずりして、今にも溢れだしそうな自身を八雲さんに擦り付けた。
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