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夏祭りに影とりんご飴 16
「っ!」
誰かの話し声が近づいてきて、心臓が飛び出るンジャないかってぐらい跳ねた。
祭りのついでにお参りに来たみたい。
一応裏側に隠れてはいるけど、周ってこられたら終わりだ。
だんだん近づいてくる足音と声が八雲さんにも聞こえてるはずなのに…抜くどころか動きさえ止めてくれなくて。
「~~っ!」
体重を完全に八雲さんに預けて、オレは声が漏れないように口元を両手で強く押さえつける。
やめてって首を振って抗議するのに、八雲さんは笑ったまんま止まってくれない。
見られちゃうかもしれないのに、どこかで興奮してる自分がいるのがわかって。
今までで一番強く締め付けているのがよくわかる。
「っ、もしかして興奮してる?えっろ…」
相変わらずイイところを狙って外さない腰の動きに、快楽に任せて声を出したい気持ちと抑えなきゃって思う気持ちがまざって、もういっそ意識を失いたいとさえ思えてきた。
幸い、近づいてきてる人たちはそこそこ大きい声で話してて、オレたちの存在にまだ気がついてないみたい。
鈴をガラガラと鳴らして、拍手が2回聞こえてきた。
お願いごとを唱えてる間は無音になるから、今まで気づかれてなかったけどバレる…!
また首を横に振ってダメだって伝えるけど、相変わらず涼しい顔をしてて。
「ガマンしなきゃえろいところ見られるかも」
なんて耳元で吐息だけで囁かれて、全身がぶるりと震えた。
こんなことされたら、興奮しちゃうってわかってるくせに…!
前立腺をぐりぐりされて、全身に電流が流れてるみたいに震える。
気持ちいい…声だしたい…おもいっきりイきたい…。
反り返ってる自身からはさっきから精子がぱたぱた垂れてて、火傷するんじゃないかってぐらい熱い。
前も触りたい衝動に駆られてきて、でもそんなことできなくて。
絶対八雲さんはこうなるようにしてるんだなって、ぐらぐらする頭で考えた。
「そろそろ行こうか」
って声がして、引き返していく足音が聞こえてきた。
緊張の糸が切れて、手に込める力が少しだけ抜けた瞬間。
「ひゃ、あんっ!?」
八雲さんが、陰茎を扱き始めた。
今までにないぐらい高い声が、静かな境内に木霊する。
慌てて口をつぐむけど、絶対に聞かれた…戻ってきちゃう…!
「えっ、なに…?」
「なにかの声?」
せっかく帰りかけてたのに、こっちを訝しむ様子がわかる。
ヤバイ…!
オレの心臓は全力疾走したあとみたいに早鐘を打ってて、冷や汗も流れる。
焦るオレとは反対に、八雲さんは落ち着いてるようで。
もう終わった絶体絶命だって悟って、身体の力を抜いたとき――。
「にゃー」
今度はネコの鳴き声が響いた。
「あー、なんだネコじゃん」
「びっくりした…」
オレの声をネコと判断した人たちは、もう立ち止まることなく石畳の階段を降りて行った。
足音が完全に聞こえなくなったところで手を離して、大きい溜息をついて脱力する。
「危なかったね、南?」
「もう!八雲さん!」
「ごめん、ほんと南が可愛くて」
「し、信じられない!」
泣きながらぽかぽか八雲さんのことを叩けば、あんまり反省してなさそうに笑いながらオレの頭を撫でる。
「おかげでいろんなえろい南見れたし、俺は大満足だけど」
ハートが付きそうなキスをおでこに落とされて、まあ八雲さんがいいならいいか…とか思ってしまうあたり本当に末期。
「もう…最後まで、ちゃんとシてくださいよ…」
もうオレ、八雲さんに甘すぎ。
八雲さんがオレのことを好きだからっていう気持ちが伝わっちゃえば、たぶんなんでも許すんだと思う。
それぐらいデレデレ。
「南の仰せのままに」
ああ、もう。
こうやって紳士なところを見せられて、またときめいて。
八雲さんに背中を見せるように姿勢を変えられる。
「しっかり手ついてて」
「ぁ、ん…」
目の前の木に手をつけば、後孔に熱いソレをぴとっと当てられて。
「明日、立てると思うなよ」
「んっ、あ、あ――っ」
顔も身体もぐしょぐしょにさせながら、尽きるまで狂おしく抱き合った。
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