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【番外編】いるだけで

「お前らいつ結婚すんの?」 「は?」 突拍子もなく、矢吹は言い出した。 今、俺の部屋に課題をやりに来てる矢吹と(もちろん一度突っぱねた)いつも通りな南がいる。 矢吹がちゃんと課題に集中できるよう南は宿題を、俺は予習をしていた。 紙とペンの音しか響かなかった空間に、突然「いつ結婚すんの」と効かれたらああなってしまうのは必然だと思う。 「なに、お前は俺らに結婚してほしいの?」 小一時間ほどみんな集中して机に向かっていたし、いい息抜きになるかと思って矢吹に構ってやる。 「矢吹さんご祝儀いっぱい包んで」 「最近南の俺に対する扱いが雑になってる気がする」 「よかったな矢吹、気のせいじゃないよ」 「2人して畳み掛けてくるのやめて!?」 矢吹がわざとらしく泣き真似をする。 正直けっこう面倒くさい。 南も同じ事を思ったみたいで、矢吹を呆れたように見てる。 「2人に子どもがいたら絶対逞しく育つわ…」 「俺と南の子どもなら絶対可愛いだろうな」 南は言うまでもなく可愛い。子猫みたいなつり目が特に好き。 目にいっぱい涙を溜めてクシャっとなった顔が堪らない。 俺はまあ顔は悪くないし、そこそこイケメンだと思う。 周りの女子からは甘い顔ってよく言われる。 「八雲さん親バカになりそう」 「女の子だったらうんと甘やかすかも」 なんて出来るはずのない未来の子どもを想像して。 南を盗み見ればにっこり笑ってるけど、複雑な気持ちになってるのがわかる。 このまま矢吹と話を続けてたら、絶対拗ねるだろうな。 「そういえばさ、立花が今夜合コンするかもって言ってたけど」 「え!?まじで!?」 「人数集まらなくて悩んでたけど…矢吹聞いてみれば?」 「そうするわ!人数ぐらいサクっと集めるのに昴のヤツ!」 バタバタと慌ただしく荷物をまとめて、台風のように去って行った。 「……」 さてと。 俺は何か言いたそうにしてる南の相手をしなきゃ。 南の背後にまわって、後ろから抱き締めるように座る。 甘えるように俺に寄りかかってきたさら、あやすように頭を撫でた。 「……八雲さん、子ども欲しいの?」 やっぱり気にしてるな。 南に悪いことをしてしまった。 「ん…矢吹の話に乗っただけだよ」 安心させるように首筋にキスを落としながらしゃべれば、くすぐったそうにくすくす笑う。 「ふふっ。オレは…八雲さんがいれば、何もいらない」 俺の髪に顔を埋めて言うから、相当恥ずかしいんだろう。 南の鼓動が、背中からでも伝わってきて。 南が健気で可愛いから、後ろからぎゅっと強く抱き締める。 「俺も南しかいらないし、欲しくない」 そう言えば、南は黙って俺の腕に手を添えてきた。 しばらく無言の時間が続いき、南の鼓動を感じながらお互いの熱を感じ合って。 「八雲さん、ずっとオレの隣にいて…」 「ん…死んでも離さない」 ぽつりと言った南の言葉に、深い口づけをしながら応えた。 ▽ 11月22日:いい夫婦の日 形にこだわらない2人

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