71 / 238
【番外編】とある日の南兄弟
「兄ちゃんさー」
「ん?」
「嫌なことあると所構わずタバコ吸う癖治らないね」
「あー…まじか…」
こんにちは。悠太(はるた)の兄の南大也です。
今日、大学でムカつくことがあって軽く噴火させたら、八雲に「もう今日は帰って頭冷やせ」って言われた。
真面目な八雲に帰れって言われるってことは、相当酷かったんだと思う。
つか、噴火させたときの記憶がない。
気がついたら周りのヤツらはドン引きしてて、何人かは泣いていたほどだ。
たしかに、帰れって言われても仕方ない。
あのときの俺はまともな理性なんかなくて、誰にでも噛みつきそうな狂犬だったと思う。
先生への言い訳なんかは、八雲がうまく話をしてくれてる頃だろう。
で、家に帰ろうとしたら鍵を持っていないことに気がついて、さらにミニ噴火。
見かねた八雲が悠太に連絡を入れて、兄が倒れたと嘘をつき早退。
弟をわざわざ大学まで来させて、一緒に帰ってる途中の冒頭に至る。
つまり、歩きタバコをしていたようで。
さすがに歩きタバコなんてしたことなかったし、なんだかんだ禁煙も頑張っていただけにショックを受けた。
「悪い、すぐ消すわ」
「うん。そうしたほうがいいよ」
胸ポケットから携帯灰皿を取り出して、タバコを潰した。
「まじ悠太がいてくれてよかったわ…」
「オレも兄ちゃんがいてくれてよかったって思ってるよ」
ニカっと笑った我が弟の顔だけで、さっきまでのイライラが嘘みたいになくなった。
この笑顔を見ると、あの八雲が悠太のことを好きになったのも頷ける。
正直、八雲に悠太をとられとは思ってなかったけど。ムカつくぐらいらぶらぶだし、八雲のことも好きだし、今は素直に応援できる。
いつかはブラコン治さなきゃいけないとは思うんだけどなー。
悠太の笑った顔が最高なんだよなー。
「やっぱり悠太は笑った顔が一番だよ」
「え?なに、突然」
「こっちの話」
「なんだよー気になるじゃん!」
「んー」
「ちょっと、兄ちゃんー」
ねえねえ何の話?って腕を掴んで上目遣いをしてくる。
俺の弟はこんなに可愛い。
悠太の恋人が八雲じゃなかったら、俺は兄として安心して預けられなかったと思う。
八雲のことは本当に信頼も信用もしてるから。
「悠太さ、嫌なことあったら俺のところにも来いよ」
「わわっ!兄ちゃん雑!」
悠太の頭を鷲掴みして、豪快に撫でてやる。
文句言いながら楽しそうに笑う悠太を見て、兄としての役目をしっかり果たさなきゃなって思った。
▽
11月23日:いい兄さんの日
仲良し南兄弟
ともだちにシェアしよう!