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【番外編】とある日の南兄弟

「兄ちゃんさー」 「ん?」 「嫌なことあると所構わずタバコ吸う癖治らないね」 「あー…まじか…」 こんにちは。悠太(はるた)の兄の南大也です。 今日、大学でムカつくことがあって軽く噴火させたら、八雲に「もう今日は帰って頭冷やせ」って言われた。 真面目な八雲に帰れって言われるってことは、相当酷かったんだと思う。 つか、噴火させたときの記憶がない。 気がついたら周りのヤツらはドン引きしてて、何人かは泣いていたほどだ。 たしかに、帰れって言われても仕方ない。 あのときの俺はまともな理性なんかなくて、誰にでも噛みつきそうな狂犬だったと思う。 先生への言い訳なんかは、八雲がうまく話をしてくれてる頃だろう。 で、家に帰ろうとしたら鍵を持っていないことに気がついて、さらにミニ噴火。 見かねた八雲が悠太に連絡を入れて、兄が倒れたと嘘をつき早退。 弟をわざわざ大学まで来させて、一緒に帰ってる途中の冒頭に至る。 つまり、歩きタバコをしていたようで。 さすがに歩きタバコなんてしたことなかったし、なんだかんだ禁煙も頑張っていただけにショックを受けた。 「悪い、すぐ消すわ」 「うん。そうしたほうがいいよ」 胸ポケットから携帯灰皿を取り出して、タバコを潰した。 「まじ悠太がいてくれてよかったわ…」 「オレも兄ちゃんがいてくれてよかったって思ってるよ」 ニカっと笑った我が弟の顔だけで、さっきまでのイライラが嘘みたいになくなった。 この笑顔を見ると、あの八雲が悠太のことを好きになったのも頷ける。 正直、八雲に悠太をとられとは思ってなかったけど。ムカつくぐらいらぶらぶだし、八雲のことも好きだし、今は素直に応援できる。 いつかはブラコン治さなきゃいけないとは思うんだけどなー。 悠太の笑った顔が最高なんだよなー。 「やっぱり悠太は笑った顔が一番だよ」 「え?なに、突然」 「こっちの話」 「なんだよー気になるじゃん!」 「んー」 「ちょっと、兄ちゃんー」 ねえねえ何の話?って腕を掴んで上目遣いをしてくる。 俺の弟はこんなに可愛い。 悠太の恋人が八雲じゃなかったら、俺は兄として安心して預けられなかったと思う。 八雲のことは本当に信頼も信用もしてるから。 「悠太さ、嫌なことあったら俺のところにも来いよ」 「わわっ!兄ちゃん雑!」 悠太の頭を鷲掴みして、豪快に撫でてやる。 文句言いながら楽しそうに笑う悠太を見て、兄としての役目をしっかり果たさなきゃなって思った。 ▽ 11月23日:いい兄さんの日 仲良し南兄弟

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