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夏を溶かす
夏祭りも終わって、いよいよ本格的な夏の暑さが訪れるであろうお盆前に。
「……」
「八雲さん…」
俺の部屋のエアコンが、壊れた。
最悪だ。本当に最悪。
昨日の晩から朝にかけては比較的涼しかったから、エアコンは付けずに窓を開けて扇風機で過ごした。
今日、南が来るから部屋を涼めておこうと思って10時頃付けたら無風。
前にも言ったと思うけど、俺は暑いのが嫌いだ。
どれぐらい嫌いかっていうと、イライラして暴力的な行為に出てしまうぐらい嫌い。
「……南」
「はい」
「ごめん」
「あはは、これぐらい大丈夫ですよ」
南はにっこり笑って「後でアイス食べましょう」って言ってくれた。
本当にいい子に育ててくれてありがとうと、あの一風変わった両親に言いたい。
あと、不本意だけど大也にも。
「業者にはもう連絡したから来週には直るけど…今日どうする?」
「八雲さんが嫌じゃなければ泊まりたい、です」
こんなに可愛く言われたら断るわけなくて。
南がいれば暑いのなんて気にならないかもしれない。
と、思っていた俺が甘かった。
最初は普通にしてた南も、日が昇るにつれやっぱり暑がり出した。
そう、肌露出の多い服に着替え始めた。
ポロシャツは胸元のボタンを全て開け、七分丈のパンツは脱ぎ捨てられて部屋着用のショートパンツを履いている。
しかも、南は俺の目を気にすることなくソファーベッドに寝転んでいるから、堪ったもんじゃない。
眩しいけど毒。
汗ばんだしっとりした肌が、俺の理性をぐらつかせる。
「あのさ南」
「はいー?」
「あんまりそういう格好されると、もたないんだけど」
「……ど」
「え?」
「~っ!誘ってる、つもりなんですけど!」
瞬間、脳天から雷が直撃したような衝撃が襲った。
俺の南はなんでこんなに可愛いんだろうか…心臓がいくつあっても足りない気さえする。
「なに、祭りのあと本当に立てなくなったのにシたいの?」
「だって…エアコン直るまでそんなできないし…シておきたいです」
「あーもう可愛い」
寝転がってる南の上に被さるように、俺も寝転ぶ。
ちょっと嫌がる素振りを見せるけど、顔は嬉しさを隠しきれてなくてもうでれでれ。
南を仰向けにさせて、夏を溶かすようなアツイ口づけをした。
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