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【番外編】断れない
「南、お願いがあるんだけど」
「……オレの勘がなんかざわついてるんですけど」
「大したことじゃないよ、ちょっとこれ履いてほしくて」
そう言って八雲さんが袋から取り出したのは、ニーハイ。
もう一度言う。ニーハイだ。
この人はこんなイケメンな顔で何を言ってるんだろうと本気で悩む。
場所は言わずもがな、八雲さんの家。
いつも通りソファで寛いでたら、いきなり切り出されて今に至る。
「いや、あの、なんでニーハイ?」
「矢吹から渡された」
「はい?」
話を聞いてみれば大学で突然ニーハイを渡されたらしく、一度押し返したものの「南って脚キレイじゃん?いいの?」って煽られたらしい。
八雲さんってほんとオレのことになるとチョロい…心配になってくるレベルだ。
「ねぇ、履いてよ南」
「い、やです…」
八雲さんがニーハイを持って少しずつ迫ってくる。
普通ならここでときめくんだけど、いかんせんオレはニーハイを履かされそうになってる。
仮に履いたとしよう、ニーハイを。
あの八雲さんが履かせて見るだけでおさまるはずがない。
絶対、やられる。
やられるのがイヤなんじゃなくて、むしろ…好きだけど!
男がニーハイって普通に考えて!
「お願い」
「ちょっ、と…八雲さん!」
じわじわ迫って来て、逃げようにもソファで寛いでたから逃げ道とか最初からなくて。
八雲さんちに置いてる部屋着用のスラックスの裾から手を滑りこませて、やらしい手つきで撫でられる。
「んっ…」
脚を撫でられながら、気がついたら押し倒されていて。
「南の脚、キレイ…」
裾を捲られて、足首から脛にかけてキスを落とされる。
八雲さんの髪がふわふわ当たって、くすぐったい。
「ふっ、ぁ…八雲さん…」
「南…履いて?」
脚をやらしい舌で舐めあげられながら、視線だけこっちを向けてくる。
たれ目なのにしっかりとオレを捉えて離さなくて、吸い込まれそうになる。
「ぅ…」
獲物を見つけた狼のような、絶対に逃さないっていう瞳に揺らいでしまう。
「履くだけ…ですよ…」
そして、オレは今日も八雲さんに落ちるんだ。
しぶしぶニーハイを履こうとして手を差し出したら、八雲さんに不思議な顔をされた。
オレが不思議な顔をしたいんだけど…もしかして…。
「あの、履きたいんですけど…」
「南はじっとしてて。履かせてあげるから」
ですよね!
八雲さんってこんなにヘンタイだったっけ?
もう八雲さんには逆らえないって痛いぐらいわかってるから、オレは大人しくされるがままになる。
ニーハイを履かされるなんて…女子だったらいいだろうけど!
「って、ちょっと!?」
「なに?」
「なんでズボン脱がそうとするんですかっ」
てっきり今履いてる靴下を脱がされると思ってたから、ズボンのゴムに手をかけてきたからさすがに焦って。
「脱がないとニーハイの意味ないだろ?」
……たしかに。
足首までのズボン履いてるのにニーハイ履いても意味がない。
「や、あの…自分で脱ぎます!」
「もっと恥ずかしいことしてるのに…照れてる南可愛い」
すごい逆効果!
恥ずかしがるオレをよそに、構わずズボンを脱がしてくる。
もういい…好きにして…。
するすると脱がされたズボンは床に無造作に置かれ、ニーハイを左脚から通される。
八雲さんの長くて細い指が丁寧に触れてくるから、恥ずかしいのに優越感があって。
ガラスの靴を王子に履かせてもらったシンデレラは、こんな気持ちだったのかな…とか乙女な思考になったのを慌てて止める。
「はい、いいよ」
乙女になってる間にニーハイを履かせ終わったみたいで、八雲さんが目をキラキラさせながら立ってと催促してくる。
「あ、あんまり見ないで…」
立ち上がったはいいけど、かなり恥ずかしい。
上に着てるトレーナーは八雲さんのだから少し大きくて、それがワンピースみたいになってて下着がちょうど隠れる長さ。
下着が見えないように、トレーナーの裾を少し引っ張った。
「南…それえろい」
「だって…!」
八雲さんの瞳が揺れてるのがわかって、さらに恥ずかしくなる。
「すごくそそられる」
八雲さんに太ももを撫でられたあと、その手はニーハイの下に潜ってきて。
脚に意識を集中させてたら唇を奪われてて、下半身がすぐ反応してしまった。
「可愛い…」
そう言いながら再びソファーベッドに押し倒されたオレは、早く触ってほしくて自分からキスをした。
▽
11月28日:いいニーハイの日
ニーハイを履かせたい八雲と断れない南
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