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恋人コンプレックス 6

「すっかりキスだけで勃つようになったな」 「っ、んぅ…」 唇が触れるか触れないかの距離で、恥ずかしい言葉を八雲さんは囁きかけてくる。 「はあっ…俺も、そんな南を見て反応するようになっちゃったんだけど」 八雲さんも下腹部が熱くなっているみたいで、オレのと擦り合わせるように押しつけてきた。 洋服越しでもわかるほど、硬くて熱くなってるのがわかる。 八雲さんもオレとのキスでこんなに反応してくれるのがすごく嬉しい。 「あ、つ…八雲さんも、あつい…」 「夜まで抱くのガマンするつもりだったのに…」 湿っぽいえろい息をはいて、勘弁してと小声を漏らす。 理性と情欲に揺れてる八雲さんがなんだかおかしくて。 オレはもう自分の部屋とか関係ないって頭になって、抱いてほしい欲望で胸がいっぱいになった。 「ほしい、八雲さん…」 「あのなぁ…そう言うけど、ここお前の部屋だってことわかってる?」 「む…欲しくなっちゃったんだから、しょうがないじゃないですか」 「それに、今しても夜だってあるんだけど」 「わかってます…でも、今日はずっとこうしてたい…」 さっきから洋服を押し上げて主張している下半身を、八雲さんに訴えるように押しつける。 ガマンしてるけど八雲さんもやっぱり男で、ちょっと反応したのがわかった。 「ほら、八雲さんだってこんな…」 オレがぐいぐいと腰を押しつけてねだれば、八雲さんは観念したよにうに小さく唸った。 「これだけ煽っておいて、容赦なんてしないから」 前より伸びた艶やかな黒髪を掻き上げてオレを見下ろす八雲さんは、言葉にできないぐらいのえろさで。 そんなえろさに息を飲んだ瞬間、唇に嚙みついてきた。 「ぁ…まって、」 「だめ、待たない」 もう完全に吹っ切れたのか、八雲さんは手でオレの目を覆い隠して、唇やら舌やらに歯で噛みつく。 本当に飢えた狼みたいで、初めは戸惑ったけど噛みつかれるのもだんだん気持ちよくなってきて。 また今日も八雲さんに溺れていく。 舌を絡めてきたかと思えばまた噛んでの繰り返しで、オレはすっかり八雲さんのペースに飲み込まれていた。 視界も相変わらず塞がれたままで、よけいにそう感じるのかもしれない。 だんだんそこにいるのが本当に八雲さんなのかわからなくなって、洋服を掴んで不安を紛らわせてみた。 でもそれだけじゃ全然拭いきれなくて、オレはただ切なそうに名前を呼ぶことしかできない。 「や、あ…やくも、さぁ…やくもさ…!」 「ん…いるよ、南。俺はちゃんとここにいる」 「やくもさん…やく、ふぁ…」 「やば…可愛い南」 オレが不安になってることに気がついてくれたのか、八雲さんは名前を呼んでくれる。 狼になっても八雲さんの優しさはちゃんとそこにあって、強張ってた心も身体もすっと軽くなった。 「いい子」 目を塞がれてた手が離れて、うっすら瞼を開ける。 そこにはちょっと困ったように笑う八雲さんがいて、あやすように頭をなでてきた。 「ごめん、ちょっと余裕なかった」 「大丈夫です。八雲さんはやっぱり八雲さんだなって思えたから」 「ほんと、お前には敵わないな」 そう言って、さっきまでとは違った優しいキスを落としてくれる。 たまに、八雲さんはいったいどこまで計算でどこから素なんだろうって考えることがある。 なんて言えばいいのかわかんないけど…波っていうか緩急っていうか…とにかく、コントロールがうまい。 オレはいつもそのコントロールに従うしかなくて、完全に受け身状態。 でも、八雲さんになら全部支配されてもいいとか思っちゃうから…ある種のコンプレックスなのかもしれない。 「それ、こっちのセリフなんですけど…」 「ん、なに?」 ぼそっと言った言葉は八雲さんの耳に届かなったみたいで、不思議そうに聞き返したけど、オレはごまかすようにキスをした。

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