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恋人コンプレックス 8

南の家から帰って来た俺は、少しの間弓道場に行っていた。 昨日はいつもと違う環境…というか、南の部屋で南を抱いてることに、何故だか異様に興奮して。 久しぶりに「性欲オバケ」って言われたぐらいには抱き潰した自覚はある。 朝起きたときだって、隣で恥ずかしそうに自分のベッドの匂いを嗅いでいたから、堪らなくなってもう1ラウンドしてしまった。 これ以上南の部屋にいたらもう絶対に抑えられないと思って、ちょっと強引に帰って来たわけだ。 本当は夕方ぐらいまで一緒にいたかったけど。 冗談じゃなく南を潰しそうだったから、なけなしの理性を叱咤した。 だから弓道場に行って精神を落ち着かせに行ったんだけど。 「……南?」 アパートに帰ってきたら、俺の部屋のダドアの前で座り込んでいる南がいた。 どこか体調が悪いんじゃないのかと思った俺はいてもたってもいられなくて、すぐ南に駆け寄る。 名前を呼びながら顔を見てみれば、欲情しきった表情をしていて。 「ぁ…やくもさん…?」 湿っぽくて少し掠れたその声は、俺の火を付けるのには十二分だった。 「南、立てる?とりあえず中に入ろう」 今すぐ襲いたくなってしまう衝動をなんとか抑えて、南を支えながら部屋の中へ入れる。 支えてる間も南の熱くて湿った吐息が首筋にかかって、抱き締めたくて仕方がなくて。 なんとかソファーベッドまで運んで寝かせてやれば、南が両手を広げて甘えてくるからその腕の中に収まってやる。 俺も南の背中に腕をまわして、しっかりと抱き締め返した。 「オレ、八雲さんが帰ったあと自分の部屋に戻って……」 しばらくそうしてたら、南がここまで来た理由をぽつりぽつりと話始める。 「オレの部屋いっぱいに八雲さんの匂いがして…胸がきゅって苦しくなって…」 「うん」 「そしたら、熱くて仕方なくて……オレ、八雲さんがいないとダメな身体になっちゃった…」 震える声で俺がいないとダメな身体になったって言われて、黙っていられるほど出来た人間なんかじゃなくて。 この腕の中にいる恋人が可愛くて愛おしくて、どうにかなりそう。 麻薬みたいに南は俺のことをドロドロに溶かしていく。 恋人がいないとダメな身体になったのは、南だけじゃなくて俺もとっくになってたんだと今気づいた。 「俺だって、南がいないとダメなんだけど」 「八雲さんも…?」 「そう、俺も。南のこと考えてない時間なんてない」 「は、ず…」 自分の赤い顔を隠すように俺に抱き着いてくるの反則すぎる。 こういうのを無意識でやってしまう南は、本当に小悪魔だ。 「俺も南も、お互い依存し合ってるから」 「…依存してるの、オレだけだったらどうしようって思ってました」 「それはあり得ないから大丈夫」 「ふふ…オレたち、すごくダメですね」 その南の一言は、心の芯から何かが溶け出していくような感覚に陥る。 俺は相当タチの悪い麻薬を手に入れてしまったみたいだ。 南と静かにキスをして、久しぶりにゆっくりと抱き合った。

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