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希う 2

ギラギラとした太陽が照りつける外の世界から、水族館特有のひやっとして薄暗い館内に入る。 目が明るい場所に慣れてから、最初はどこに何があるのかあんまりわからなかったけどすぐに慣れた。 他の人の邪魔にならないように端っこに寄って、八雲さんと一緒に受付でもらったパンフレットを覗き込む。 「まずは順路通りですかね?」 「そうだね。てか、俺水族館初めてだ」 「そうだったんですか?」 今思い出したと言わんばかりの初めて宣言に、心底びっくり。 でも、八雲さんの初めての水族館はオレと一緒なんだ思ったら胸が膨れ上がる。 そんなオレの喜びに気づいた八雲さんは、口に手を当ててくはっと笑った。 「南わかりやすすぎ」 「もういいです、慣れました」 ちょっと拗ねたように言えば、八雲さんは笑みを深くするばかり。 いろんな人にわかりやすいって言われるから本当は嫌だけど、この八雲さんのくしゃっとした笑顔は大好きだから、八雲さんに言われること限定だけど満更でもない。 あ、キス。 八雲さんを見れば、オレにはわかる。 これはキスをしたいときの表情だ。 「ここ…外、なんですけど…」 「でも南もそういう顔になってる」 隠せるとも思ってなかったけど、そうハッキリ言われると恥ずかしい。 周りに人がいないか確認すれば、幸いみんなこっちを見ていないみたい。 顔をくいっと上げて目を瞑れば、ほどなくして柔らかい感触が唇に広がる。 「興奮する」 「……へんたい」 オレはきょろきょろと周囲を確認してるのに、八雲さんは余裕な笑みしか浮かべてなくて。 その余裕はいつもどこからくるのか、きっと墓場まで持っていく謎になる。 顔を赤くしながらきょろきょろしてるオレが面白かったのか、八雲さんがいたずらな笑みを浮かべて「ねえ」って呼ぶ。 こういうときの八雲さんなら嫌っていうぐらい知ってる。 絶対よくないことを思いついた顔だ。 「俺がウインクしたら南からキスして」 ほらね、八雲さんってほんとこういうこと好きだよね。 というより、オレの反応を見て楽しんでるんだろうけど…。 「い、やですよ!」 さすがにそれは恥ずかしいってぽそって言うと、八雲さんは聞いてないふりしてさっそくウインクしてくる。 八雲さんはこうなったら絶対に曲げないし、なんだかんだオレも受け入れちゃうことをお互いがよく理解してるから。 「目は、瞑ってて」 だから、精一杯のちょっとした反抗を見せるんだ。 目を瞑ったことと周りを確認した後、八雲さんの腕を掴んで体を支えて、背伸びをしてキスをする。 「南が背伸びをしてキスしてくるの本当に可愛い」 「は!?」 「水族館って楽しいんだね」 水族館はそういうのを楽しむ場所じゃないんだけど!

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