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【番外編】君へ贈るキスは

「ねえ八雲さん」 「なに?」 「今日ってキスの日らしいですよ」 「日本で初めてキスシーンがってやつか」 学校終わり、いつも通り八雲さんのアパートに居座って話しかけてみれば、物知りな八雲さんはやっぱり知っていたみたいだ。 「もしかして、キスする場所によって意味が違うのも知ってました?」 そう言えば少し考えた様子を見せて、聞いたことはあるけど詳しくはないって答えた。 「じゃあ…今オレにキスをするとしたらどこにします?」 「それってもしかして俺を試してる?」 「試すとかじゃなくて、ただちょっと気になっただけっていうか…!」 ただの興味本位で聞いたのに、意地悪くにやりと笑うから急に恥ずかしくなって慌ててごまかす。 「ふーん」とか言いながら妖しく笑うの、ほんと心臓に悪いからやめてほしい…でもかっこいい…。 そんなオレの葛藤を知ってか知らずか、八雲さんが近づいて来てゆっくりソファに押し倒される。 「ちょっとずるいかもしれないけど」 「え?」 謎の前置きをした八雲さんはオレのワイシャツのボタンを半分ほど外し、胸元に顔を埋めてちゅっと唇を落とした。 「ふは、」 ふわふわの髪が肌をかすめて、くすぐったくて身じろぐ。 そんなオレの反応を見て楽しくなったのか、胸元に吸い付いてキスマークをいくつか残した。 八雲さんが頭を上げたから「胸なんですね」って言おうとしたら、次は喉元にまたキスマークを残し始めて。 ちゅっと大きなリップ音をたてるから、だんだん恥ずかしくなってきて笑う余裕がなくなってきた。 「ん…かわい、南」 しかもわざと熱い吐息とか漏らすから、オレの下半身が反応しないわけがなくて。 緩く反応し始めてるのをバレないように意識を八雲さんから離そうと試みるも、すべてお見通しとでも言うように腰をがっちり掴まれた。 「や、もう…だめ」 「俺を試してるんじゃないの?」 「ほんと、ずるい…!」 そんなセリフを耳元で囁かれて、もう全身が溶けそう。 「これで最後」 そう言った八雲さんはオレの頭に手をまわして、深く口づけてきた。 「んっ…ふ、」 いつもよりゆっくり舌を絡めてきて、八雲さんとひとつになっちゃうんじゃないかっていうぐらい深い深いキスを受ける。 全身どろどろになって自分が消えてしまいそうな錯覚がしたから、腕を八雲さんの首元にまわしてお互いの存在を確認する。 「すき…やくもさん…」 「うん、俺も」 シャツの中に忍び込んできた手を感じて、オレは期待に身体を震わせた。 事後、ぼーっとする頭で八雲さんがキスをしてきた場所の意味を調べて溶かされるのは、また別の話。 ▽5月23日:キスの日 胸元…所有 喉…欲求 唇…愛情

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