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深く深く考え込んでいた姫宮だったが、なかなかいいごまかしが思いつかなかった。 しかし、いつまでもこうしているわけにはいかなかった。 大河は納得することを言うまでそこを陣取っていると思われ、そしてそうしているうちに姫宮の方はいうと、裸のままでいると風邪を引きかねないし、もしかしたら最悪、大河が無理やりにでも風呂に入ってくるかもしれない。 それが一番避けたかった。 こんな酷い有り様、大河には見せたくはない。 でも、どうしたら。 『自分の気持ちを口にしてみてはどうですか?』 不意に小口の言葉が甦った。 それは久しぶりに御月堂が訪れた時のこと。 会えたことが嬉しいと、前よりも会いたくてたまらなくて、こうして触れられる距離に彼の存在を感じられて、その無骨な手に、その逞しい身体に抱きつきたいぐらい嬉しさがいっぱいだったのだが、その気持ちとは裏腹に、実際は何故か指一本触れることさえも躊躇ってしまっていたのだ。 こんなにも想っているはずなのに、この気持ちは偽りなのかと戸惑いを覚えている姫宮のことは露知らず、御月堂は一言二言言葉を交わして、姫宮から離れてしまったのだ。 「急な用ができてしまった」と言い残して。 行かないでと、今さらに上げる手は何も掴めず、虚しさが募るばかりだった。 そんな姫宮にみかねて先ほどの言葉を掛けたのだろうそれは、あの時と同じような状況ではなくとも、共通するものはある。 ごまかすようなことは思いつかなくとも、自分の気持ちを口に。 「⋯⋯なんて言えばいいのか、言葉は見つからないけれど、これだけは言っておくね。ママは大河のことを嫌ってはいないの。⋯⋯ただ、どうしても一緒に入れなくて。⋯⋯そのうち、言えたらいいけど⋯⋯」 曖昧な言い方をして、結局ごまかしているような言い方に納得するだろうか。 けれども、その理由をいつになっても言うことはないだろう。 自分の意思でしたことではなくとも、不特定多数の人と身体の関係があったなんて、そんな穢らわしいことは口が裂けても言えない。

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