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第72話 (5)※
3人でベッドに寝転ぶ。僕を挟んで右にジスが、左にシュカ王子がいる。
「……ジス。俺と契約を交わさないか」
シュカ王子が口を開いた。
「何のための契約なのだ」
くっくっ、と喉を鳴らしてシュカ王子が返す。
「阿月を幸せにするための契約だ。俺とジスで、1ヶ月ずつ交代で阿月と2人きりになれる時間を設けよう。今月は俺、来月はジスのようにかわりばんこだ。どうだ」
「ふむ。悪くはないな。そなたはどう思う?」
「……2人でいれるのは嬉しいけど、3人で一緒の日も欲しいな」
苦手なわがままを言ってみた。すると2人は顔を見合わせて苦笑する。
「3人で一緒だと、そなたが腰が引けるほど抱き潰してしまいそうだが、大丈夫か?」
ジスが心配そうな顔で聞いてくる。
「俺のほうがお前のこと抱き潰すんだよ。このトンガリじゃなくてな」
シュカ王子の威勢のいい言葉に、ジスがぽろりと独り言を洩らす。
「トンガリ……わたしの角のことか」
ジスにとって初めてのニックネームの予感がするな……なんてことを僕は思う。
「当たり前のことを言ってしまうが……」
ジスがちらりと僕を見る。
「阿月のことは我が身果てるまで決して離さぬし、生涯愛すと誓う」
真面目な顔をするジスを見て、その告白に胸がいっぱいになる。
「うん。僕もジスを愛すよ」
ふふ、と満足げにジスが微笑んだ。するとシュカ王子が割って入ってくる。
「おい。俺とお前は運命の番なんだ。それに俺はもっとお前との子どもが欲しい。阿月は俺の奥さんなんだからなっ。忘れるなよ!」
「うん。僕もシュカ王子の運命の番で嬉しい。桜のお母さんになれたのも嬉しい」
ジスとシュカ王子は僕の身体を抱きしめて言う。
「生涯隣にいよう。決して離さぬ」
「お前のこと絶対に離さないからな」
ジスとシュカ王子に手を握られる。
ここは異世界。
僕はこの世界で2回目の人生を送るオメガ。
僕らが描く未来は、他の誰かを救う物語になるかもしれない。
僕のこと、ずっと握ってて。離さないで。
僕の2回目の人生は幸せを探す旅。
こんなにもたくさん。
ありがとう。大好きだよ。
Ω に生まれてきてよかった。
そんな夢みたいな気持ちに、初めて出会った。
愛しい人達に抱かれて眠る。
さあ、今日はどんな夢を見ようか。
愛する人達といれば、どんな夢だって幸せになる。
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