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第73話 シュカ王子と暴政の改革をする桜

 フォリーヌ王国へ戻ってきてから1ヶ月が経とうとしていた。桜は己の使命通り、シュカ王子の暴政を改革するべく様々な法改正を行った。メビウスが懇願していた「農民への税収緩和」は、既にシュカ王子に判を押され、即刻フォリーヌ王国全土へと施行された。もともと、フォリーヌ王国は大地の恵の恩恵が得られる土地と得られない土地とで、大きな格差が生じていた。特に王都の中心では50年前の大干ばつにより土に塩が混じり作物が育たなくなっていた。そのため、王都への穀物輸送が必須となり、メビウスが暮らしていた郊外の農村への徴税が厳しくなっていたのだという。桜はシュカ王子並びに臣下達に郊外の農村の民の悲痛の声を訴え、これを即座に法改正が必要であると説いた。 「本当にすまなかった。俺の配慮不足で、メビウスらの農民達の命を尊重することができなかった。桜、ありがとう。お前の提案は実に的を得ている。臣下らも頷いてくれた。これで俺も暴君王子とは呼ばれなくなるかな」  法改正の後、シュカ王子は城の園庭で椅子に腰掛け、跪く桜の肩を叩いた。 「さぁ、立って。お前は俺の息子なのだから、そう律儀に敬わなくてもいい」 「父上……わかりました」  桜は膝についた芝を手で払い、シュカ王子に示された椅子へ座る。父と話すのは、法改正以来初めてだ。 「お前の顔は阿月と瓜二つだな」 「そう、ですか? 父上の特徴も受け継いでいると母上から聞いていますが……」  くしゃ、とシュカ王子が微笑む。その頬には笑窪ができている。 「話し方や雰囲気が阿月にそっくりだ。真面目で、責任感が強く、優しい子だ」 「……それは嬉しいです。ありがとうございます」 「本当にお前がこの国のことを考えて法改正を提案してくれて良かった。この国は桜がいれば永世安泰だな」 「そうなれるよう、頑張ります」 「桜はもっと父親である俺のことを頼って欲しい。ジスと過ごした期間が長いのは重々承知だが、俺も一人息子には頼ってもらいたい」  桜は、くす、と笑ってから 「わかりました。父上」  2人の影が夕方の空に溶けていくように、消えた。

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