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第77話 ※秘めやかな愛撫

「ツンデレの中でも究極のツンデレだ。阿月。お前と初めて会った日のことを俺はよく覚えている。お前は覚えているか?」  僕は暫し思案しながら記憶を遡る。確かそれは冥界からフォリーヌ王国へやってきてまもなくの出来事だった。ゴブリンに捕まり、そこでシュカ王子と初めて出逢った。出逢った瞬間、種々の花々の香りを抽出したような華やかな匂いに包まれたのを覚えている。後に王子に聞けばそれは運命の番と出逢った時のみに香る匂いだそうだ。僕は異世界に召喚される前の世界ではそのような経験をすることがなかったから、驚きで頭が一杯だった。ただ、そのいい匂いにずっと包まれていたいと願った。 「覚えてるよ。忘れられないよ。シュカ王子と初めて出逢った時のあの匂い」 「ああ。俺もだ。あの匂いに包まれたらどんなに癒されるか想像しただけでたまらなかった」  ふ、と表情を緩める王子の瞳がきらきらと艶びている。まるで瞳の奥に天の川が見えるように煌めいている。僕はその瞳に囚われるように身動きが取れずにいた。ゆっくり王子の鼻先が近づいてきてキスの予感がした。僕は目を伏せて王子の肩に腕を回して口付けを待つ。 「……ん」  ふに、ふにと唇を啄まれる。王子は僕の上唇を捲るように舐めるとそのまま濡れた音を立ててキスを繰り返す。ちゅくちゅく、という密な水音を立てて僕を攻め立てる。ぬる、と肉厚な舌先が口内へ侵入し僕の歯の裏を執拗に吸う。僕の乱れた呼吸の隙間から、ぢゅぢゅ、と唾液を吸い取るような口付けを受けた。 「っ……ふ」  鼻先から懸命に息継ぎをしていると王子がふにゃと一瞬とろけるように甘く微笑んできた。僕はそれを薄目で見ていて王子の背中に回した腕に力を込めた。 「どうした? そんなに|初《うぶ》な|表情《かお》をして。俺の前では思うまま乱れていいんだぞ」  低く響く声。僕の胎の奥まで甘く震えた。後ろがきゅうっと窄むような感覚に恥じらいを覚えて何も言えないでいると王子が意地悪な声で耳打ちしてきた。 「今夜は俺の寝所へ来い。お前の夜這いを許す」  そう言って僕の背中から腰にかけてフェザータッチで指を滑らすと、僕の尻をギュと鷲掴みしてきた。 「期待しているんだろう? 俺を《《ここ》》に咥えるのを」 「……っ!」  一気に身体中の熱がお腹の下に集まる。ぴく、と無意識に腰が揺れてしまった。王子は小刻みに震える僕の身体を観察するように眺めると、つんと服の上から胸をまさぐってきた。 「ひゃっ」 「ここじゃないな」  人差し指でつん、と再び胸の1点を押してくる。ちょうど乳首の先端に当たり僕の身体は喜ぶように跳ねた。 「ここか」  かりかりと爪を軽く立ててシャツ越しに僕の乳首に触れてくる。僕の身体は発熱したように下半身に熱を集めてとぐろを巻いている。僕は口から声が洩れるのを恐れて手のひらで口元を押さえる。足の間が熱を持ち始め、僕は静かに膝と膝を合わせて王子に下半身の異常がバレないようにした。 「こら。逃げるな。俺に見せろ」 「……ふ……っ……あっ」  足の間に力強く手を入れてきて開脚させられてしまう。僕は屋外で恥ずかしい格好をさせられているのが恥ずかしくて、今にも顔から火が噴きそうになっていた。

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