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第82話 ※

「いい子だ。よく頑張ったな」 「うう……っ……も、むり……!」  僕の身体の中の水分という水分が全て放出された気がする。ベッドシーツが濡れて背中が触れてひやっとする。王子の腹も僕の腹も潮でびしょびしょに濡れてしまった。僕はわななく腰を手のひらで摩る。 「目もとろんと溶けていて、口からは唾液が止まらないな。ほら、こんなにぐちゃぐちゃだ」 「ひぅっ……」  ごぷぞぷと舌先から喉の奥まで往復するように指を動かされて、とめどなく唾液が溢れて王子の手を濡らしてしまった。王子は引き抜いた指を見て薄らと微笑んだように僕には見えた。菫色の瞳が凛と揺れる。目の中の光の粒が弾けて瞬いた。王子の人差し指と中指の間には透明な糸が伸びたり縮んだりしている。 「さあ。阿月を十分気持ちよくしたんだから、今度は俺の番だ。後ろを向いて尻を突き上げろ」 「えっ……終わりじゃないの?」  王子の言葉に僕は絶句しそうになりながらかろうじて声を放つ。 「まだ物足りない。もっとお前が欲しい。ダメか?」 「……ぃぃょ」  僕は王子が気持ちよくなってくれればそれで良かった。身体を持ち上げ後ろを向く。猫のように四つん這いになってから、尻を突き出すように持ち上げた。自分の手で後孔を開くように手を添える。恥ずかしくてたまらないけど、ここまで尽くしてくれた王子に喜んでもらいたい一心で。 「はやく挿れて……?」  後ろを振り向きながら懇願すると、王子の瞳が獣のように暗く光ったのが見えた。慣らしもしないまま、奥まで一気に突かれシーツをギュっと握っていなければ押し飛ばされてしまいそうになる。王子は僕の背中に上半身を覆い被せて何度も僕の弱いところを昂りで押し潰してくる。何も出ていないはずなのに、僕の身体はびくびくと弾む。たぶん、ドライでイったんだと思う。出せない分、終わりのない快感が永遠と続き普段よりも気持ちよくて嬌声が止まらなかった。僕の肩に顔を寄せる王子はそれを聞いて耳元で甘く囁いてきた。 「我慢しなくていい。もっと鳴け」 「はぁ……ん……っ」 「そんなに締め付けるな」 「だ、だって……気持ちよくて死んじゃうかも」 「死なれるのは困るな」  ぐっぐっと奥深くを突かれ、中が無意識に締まる。王子の呼吸が獣のように荒くなり僕の身体に全体重を乗せてきた。律動が速くなり、中のものがぐぐっと一際大きくなったのがわかった。 「……っ出すぞ」 「んっん"」  ぎゅうっと後ろから王子の両腕に力強く囲まれた。王子が荒く息を切らす音が聞こえてきて達したのだと知る。胎の奥でどくんどくんと昂りが脈打つのが伝わってくる。奥に出されている。熱い飛沫が中に迸る。その感覚が心地よかった。数十秒間その姿勢のままでいると、王子がゆっくりと僕の中から出ていった。最後、入口にカリの部分が引っかかって抜くのに手間取っている様子だった。つぷん、と王子が僕の中から昂りを引き抜いた音が聞こえた直後だった。中からごぷ、と溢れる音が後孔から聞こえて頬が熱を持つ。 「最奥に出したのにもう下りてきたのか。後でちゃんと後処理してやる」 「……ありがとう」  王子のセリフのひとつひとつが過激すぎて僕はその場でふにゃんと恥ずかしさのあまり全身が溶けてしまうんじゃないかと思った。 「ベッドでは寝れそうにないな。今日は阿月の部屋で寝るぞ」 「は……い」  かろうじて返事をする僕を見て王子はくつくつと喉の奥を鳴らす。 「なんだ。もう限界みたいだな。仕方ない。俺が運ぼう」  王子にお姫様抱っこをされて浴室へ向かう。力尽きて足腰がおぼつかない僕を王子は浴室の中で抱きかかえて身体を洗ってくれた。ご機嫌な様子でふふんふふんと鼻唄を唄っている。泡立てた白くてもこもこした雲のような泡を身体に塗りたくられ優しく撫でるように洗ってくれた。その間、僕はぽーっとした頭のまま王子に全てを任せていたため後処理をされた記憶も薄ぼんやりとしか覚えていなかった。眠る前に見た記憶はお風呂に入り終わった僕を王子が甲斐甲斐しく水を拭き取り、新しい寝衣を着せて僕の部屋へ連れていったことだけだった。居心地のいい寝慣れたベッドの上で王子に抱き寄せられる。 「愛している」 「……僕も」  ふに、とおでこに口付けをされた。目がうとうとしていて寝ぼけ眼でも、シュカ王子の菫色の瞳は穏やかな色を帯びて僕を見つめてくれた。それに安堵して身体の力を抜いて眠りについた。  幸せの形は人それぞれ。僕は僕の幸せの形を見つけて、愛する人をいつまでも愛していく。  そんな祈りにも似た思いを胸の内に零した。

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