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3-14【※】
「――挿れるぞ」
小さくそう告げて、ルーがぐっと腰を押し進めた。
隘路をみしみしと押し広げながら、ルーの陰茎が俺のナカに挿ってくる。
何度も受け入れたはずなのに、今日はなんだか違う感覚だった。
「――ユーグ?」
ルーにも俺の感覚が伝わったらしく、怪訝そうに俺を見つめてくる。
腰の動きが止まって、微かなもどかしさも感じた。
「ルー」
静かにルーのことを呼んで、彼の黒曜石のような目を見つめた。じぃっと見つめ返され、お腹の奥がきゅんきゅんとする。
「な、もっと、奥に来て――」
甘えたように訴えると、ルーが首を縦に振った。
そして、腰の動きを再開する。今度は最奥まで一気に貫かれた。
「――ぁうっ!」
思いきり声を上げて、達した。
俺の陰茎から白濁がこぷりと零れ出たのがわかる。
中がぎゅうっと締まったらしく、ルーの表情が快楽に耐えるようなものになった。
「おい、締め付けすぎだ……!」
苦しそうにルーが言うけど、俺にはどうすることもできない。緩める方法なんてわからないのだ。
「ぁ、ルー、もっとうご――」
もっと動いてほしい。
最後まで言うよりも先にルーが腰を引いた。
陰茎が抜けていく。寂しさを感じるよりも先に、また奥まで貫かれた。
瞼の裏で火花がぱちぱちと散っていく。
「ひぃっ! あぁあっ!」
抽挿が激しくなっていく。比例するように俺の頭がくらくらとする。
軽い絶頂を繰り返して、戻ってくることができない。ずっと高みにいるみたいだ。
「ユーグ、今日はよく感じるなっ――!」
顔の上からルーの余裕のない声が降ってくる。
下腹部から聞こえるぐちゅぐちゅという水音。ばちゅんという肉同士がぶつかる淫らな音。顔に降ってくるルーの汗。
全部、全部俺の官能を煽る。
「ぁ、あっ! だって、気持ちいい……!」
「そうか、よっ!」
俺は今日、今までで一番感じている。
強すぎる快楽のせいで涙がこぼれていく。身体の動きに合わせて、涙が飛び散る。けど、俺もルーも気に留めることはない。
まるで互いの身体に溺れるように、激しく互いを求めあう。
「ユーグ、もう――出そうっ――!」
ルーが切羽詰まったような声でつぶやいて、体勢を変えた。
ほぼ真上から突き刺すような体位。俺の頭は思考停止をしたかのように快楽しか覚えてくれない。
「ルー、るー」
ひたすらルーのことを呼んだ。瞼の裏で火花が散る。散り続ける。
全身でルーを求めている。俺で感じてくれて、嬉しくてたまらない。
「な、もう、出していい――?」
問いかけに、首を縦に振った。
「い、いいよ。――ね、おれの、なかでだして――!」
わざと強請るような言葉を口にして、ルーに絶頂を促す。
瞬間、ルーが眉間にしわを寄せたのがわかった。それから、最奥を穿かれて――腹の中にじんわりとした温かさが広がっていく。
「っはぁ」
ルーが色気を含んだ吐息をこぼす。俺を見下ろす黒の瞳が快楽に酔っているみたいだった。
腹の中と心。両方がじんわりとしていると、幸福感に包まれているみたいだ。俺はずっと――。
「なぁ、ルー。もっとしよ」
脚でルーの腰を引き寄せた。逃がさないとばかりに固定して笑うと、ルーも笑う。
その後、ルーが口づけてきた。ちゅっと触れるだけのもの。しばらくして、どちらともなく舌先を絡め合って深いものへと変えていく。
「おれ、すっごいしあわせ……」
どこか夢心地になりつつも、自分の気持ちを言葉にした。驚いたようにルーの目が見開く。
「なぁ、ルー。もっと、俺に溺れてよ」
懇願するような声に、ルーが「はっ」と声を上げた。今度は俺の瞼にキスを落とす。
まるで壊れ物でも扱うかのような優しいキス。
「ユーグはバカなんだな。俺はもうとっくにお前に溺れてるっての」
俺様という言葉が似合うような表情で、ルーが言い切ってくれた。
それが途方もなく幸せだった。
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