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 あの後、二人で食事をしてまた抱き合った。深夜どころか明け方まで抱き合って、ようやく眠りについて。  もっと眠っていたいという欲望を抑え込んで、目を開ける。カーテンの隙間から差し込む日差しは温かくて、まぶしい。  一気に意識が覚醒して、起き上がった。  視界に入ったのは見知らぬ部屋。俺の住んでいるちっぽけなアパートとは全然違う内装に、別世界に来たような錯覚に陥る。  けど、眠りに落ちる前の記憶を引っ張り出して、混乱することは避けることができた。 (――俺、これからルーと一緒に住むんだ)  昨夜の生々しい行為を思い出し、頬に熱が溜まった。  身体全体が火照るような感覚に襲われつつも、ぶんぶんと首を横に振る。  なにを朝から盛っているんだ。慎め、俺。  自分自身に言い聞かせ、寝台から下りる。 「っていうか、ルーは?」  辺りをきょろきょろと見渡すものの、この寝室にルーはいない。  眠りに落ちるまでは側にいたので、俺よりも早くに起きたのだろう。うん、そうに決まっている。 「そういや、着替えとか持ってきてないや」  思い出してどうしようかと考える。  どうやら俺の身体は清められているらしく、身に纏っているのも見るからに新品の寝間着だ。  ルーが着替えさせてくれたのかと思うと、今更ながらに照れくさい――と、そんなことを考えている場合じゃない。  寝台に腰掛けて、辺りを観察した。  大の男二人が寝そべっても問題のない、巨大な寝台。棚にはところ狭しと本が詰まっていて、テーブルとソファーも置いてある。あとは書き物用の机と椅子。普通の屋敷の寝室と変わったところはない。あえていうのならば、この部屋にある家具がすべて高級品っぽいことくらいだろうか。 「やっぱり、ルーはすごい人なんだなぁ」  言葉をぽつりと零したとき、寝室の扉がノックされた。  慌てて「はい」と返事をすると、扉が開いて一人の男性が顔を覗かせる。 「おや、起きていらっしゃいましたか」  男性は鋭い目を細め、寝室に足を踏み入れた。この人、確か昨日俺とルーを出迎えてくれた人だ。 「セザール坊ちゃんには起こすなと言われていたのですが」 「あ、いえ。俺が勝手に起きただけですので……」  戸惑いがちに言うと、男性は「そうでございますか」と言って目元を緩めた。 「ごあいさつが遅れて申し訳ございません。私はアベラールと申します。このお屋敷の執事を務めさせていただいております」  深々と頭を下げたアベラールさんに対し、俺も慌てて頭を下げた。 「え、えっと、ユーグと言います……」  若干上ずった声で自己紹介をする。なんだか、いたたまれなかった。 (って、主人の恋人が同性って知って、どう思われているんだろうか)  偏見はないと言っても、ルーは高位貴族。同性婚は推奨されない立場だ。  思い出して恐る恐る顔を上げると、アベラールさんはきょとんとしていた。 「なにか、ご不安なことでもございますか?」  どう、伝えようか。  一瞬悩んだものの、素直に口を開くことを決める。 「いや、その。ルーの、主の恋人が……俺でがっかりされたのではと」  口をもごもごと動かしつつ、気持ちを伝えた。  アベラールさんは「あぁ」と気が付いたように手をポンっとたたく。 「いえいえ、特にがっかりはしませんよ。若干、驚きこそしましたが」 「ですよね……」  やっぱり、同性が恋人だというのは驚かれるのか。  まぁ、俺らってセフレからだから、バレたら余計に驚かれてしまうだろうけど。 「まさか、セザール坊ちゃんがこんな純粋な子に惚れていたとは。意外過ぎて……」  でも、アベラールさんの言葉は俺からすると、意外過ぎる言葉だった。

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