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「……俺、ルーのこと信じていいんだよな」
その目をじっと見て、確認する。
この『信じる』には、たくさんの意味がこもっている。
浮気をしていないことはもちろん、俺のこと――好きでいてくれるよなって。
「当たり前だ。……全部終わったら、きちんと話すから」
「うん、待ってる」
今、俺ができる返事はこれだけだ。
そして、俺ができることはただ信じて待つことだけだ。
(話す前も同じ気持ちだったけど、今は不思議と気持ちが軽い)
きっと、俺が自分の思いをルーにぶつけることができたからだ。
俺はルーを信じたい、信じるんだ。
「いつかは、ユーグに隠し事なく接するから」
「守秘義務はきちんと守ってくれよ」
「わかってるって」
軽口をたたき合って、どちらともなく笑い合った。
俺たちの間を流れる空気は、いつの間にか穏やかなものに変わっていた。そして、その空気も徐々に変わりつつある。
甘い空気が俺たちの間を流れる。こらえるようにぐっと息を呑む。
だって、ルーは忙しいんだし。俺のわがままに付き合ってもらうわけにはいかないし。
俺の葛藤をよそに、ルーが俺の頬に手のひらを当てる。頬を撫でる手のひらの感覚に背筋が震えて、自然と身を引いた。
「ユーグ」
ルーの甘い声は苦手だ。つい、流されてしまいそうになる。
このまま身をゆだねたいけど、今はルーに休んでほしい。とにかく、断らなくちゃ。
「その、さ。ルーだって疲れてるだろうし、とにかくゆっくり休んで」
「むり」
あっさりと切り捨てられた。
甘えるような仕草とは裏腹に、目に宿っているのは強い欲望。その視線に射抜かれるだけで、身体がじんわりと熱を帯びていく。
――抗えない。抗えるはずもない。
息を呑んで、震える唇を開いた。
「少し、だけなら――」
俺が最後まで言うより先に、ルーは立ち上がり唇を重ねてきた。
はじめは優しいキスだったのに、どんどん深くなる。苦しいはずが気持ちいい。頭はぼうっとするのに、身体は火照っていく。
気持ちいい、気持ちいい。もっと、してほしい――。
少しご無沙汰だっただけで、俺は飢えてしまったらしい。気づくとルーの首に自ら縋りつくように腕を回していた。
わずかな隙間も埋めるように、互いを貪り合った。
一体どれくらいの間そうしていたのかはわからない。互いに息が上がり始めて、俺たちはようやく離れた。
ルーの瞳に映っているのは俺だけだ――と実感すると、抱えきれないほどの幸福感で胸がいっぱいになる。
――あぁ、好きだな。
すとんと胸の中に侵入した想いに、もう目を逸らせないかもしれない。
(意地にならずに、ルーの気持ちに素直に応えよう)
同性だとか、釣り合っていないとか。問題は山積みだけど、それらは追々解決していけばいい。
(今の一件が落ち着いたら、絶対「好き」って伝えるから)
だからどうか、今だけは。自分の気持ちを胸に秘めたまま、ルーに身をゆだねたい。
贅沢かもしれないけど、いろんなルーが見たいから。恋人じゃないあいまいな関係を最後に味わいたいんだ。
「今日、ユーグの部屋で寝ていいか?」
「ん」
短い返事に満足したらしく、ルーがちゅっと触れるだけのキスを落とす。
当然のように俺を横抱きにして、食堂を出ていこうとする。……あ、でも。
「まだ夕食途中だろ」
料理はまだ半分ほど残っている。
普段ルーはすごく食べるので、食事量が足りていないのは明らかだ。
「アベラールが後片付けしてくれるって言ってたし、無駄にはならないだろ」
「そういうことじゃないって」
そりゃあ、料理がどうなるかも心配だけど、一番はルーの食事量が足りているのかっていう話であって……。
「明日早めに起きて食べるから大丈夫だ。一回食事量を減らしたって死にはしない」
「……だけど」
「あんまりそういうこと言うなって。せっかくそういう空気なのにさ」
見上げると、ルーは眉尻を下げていた。その表情がなんだか面白くて、ついぷっと吹きだしてしまう。
「あぁ、うん。まぁ、ルーがいいならいいけどさ」
「そうそう。それに、どうせそんなこと気にならなくなるだろうしな」
つまり、ルーが言いたいのは……。
(考える余裕なんて与えないってか)
それはいつも通りといえばいつも通りだけど、なんだか胸が甘い締め付けを感じたのは、ルーには伝えずにおこう。心に誓った。からかわれたくないし。
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