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「うっ……」  自然とうめき声が漏れる。  亜玲の手つきがあまりにもいやらしい所為で、感じてしまっている。 (っていうか、こんなのマジでハジメテだ……)  人に自身のものをしごかれるのも、こうやって触れられるのも。正真正銘、ハジメテだった。  別に乙女チックなことを思っているわけじゃない。ただ、人に触られるのって予想以上に気持ちいいな……って、思ってるだけ。  しかし、今、俺のものを握っているのは亜玲なのだ。あの、悪魔のような男なのだ。 「や、めろ……」  快楽をねじ伏せて、必死に拒絶する。  でも、亜玲は手を止めない。それどころか、溢れた先走りを竿に絡ませつつ、しごいてくる。  まるで、俺の中の快楽を爆発させようとしているかのようだった。 「もう、めちゃくちゃだね。……快楽で、先走り溢れてるし」  亜玲の手のひらが、てらてらとしている。  それを見ていられなくて、そっと視線を逸らす。  なんというのだろうか。人に弄られるのは、こんな感覚なのか。  それとも、ただ亜玲が上手いだけなのか。それは定かじゃないけれど、俺は感じてしまっていた。  感じさせられ続けた。 「ひぐっ、あ、あれい、やめ……!」  先端を弄られて、びくっと腰が跳ねる。  自然と目に涙が溜まって、亜玲を見つめた。……亜玲は、笑っていた。  それはそれは、楽しそうに。 「あ、辛い? じゃあ、一回出しておこうか」  亜玲が俺の耳元で、そう囁く。その後、先走りを手のひらに絡めて、先ほどよりも容赦なく陰茎をしごき始めた。  ……先走りのぬめりと、亜玲の手のひらの感触。あっさりと、達してしまいそうだった。 「ぁあっ!」 「いいよ。……思いきり、出しても」  にっこりと笑った亜玲の表情が、あまりにも艶めかしくて。  俺の中のなにかが崩壊して、ゾクゾクとしたものが這い上がってくる。  それに、この感覚はなんなのだろうか。  ……お腹の奥底が、きゅんきゅんとする。  そう、それはまるで――発情期のようで。 (お、れ、もしかして……)  亜玲に、犯してほしいって、思ってる……?  オメガの欲求としては、正しいのだろう。でも、嫌だ。亜玲に犯されるのは、それだけは絶対に嫌だ。  そう思った瞬間、亜玲の手の動きが早くなって。俺はあっけなく達した。  どくどくと先端から白濁が溢れ出るのがわかる。  亜玲は、それをただ見つめていた。 「可愛いね。……出しちゃった」  ニコニコと笑って、亜玲がそう言ってくる。  その笑みが憎たらしくて、俺はそっと視線を逸らす。口元に手を当てて、声も出さないようにと抵抗する。 「俺のも、反応しちゃった。……祈、可愛い」  亜玲が俺の額に口づけを落として、自身の下肢をジーンズ越しに俺に押し付けてくる。  ……ドクンドクンと大きく脈打っているように感じられる。  俺の本能が、ソレを欲しいと思ってしまった。 (ダメだ、こいつは、亜玲で……)  しかも、今は襲われているような状態なのだ。  こんなの、不本意だ。嫌だ。  そんな風に思うのに、オメガとしての本能が亜玲を求める。  この肉棒に貫かれたら気持ちいだろうと。孕まされたいと。  そう、思ってしまっている。 「ぁ、あ、れい……」  震える声で、亜玲を呼ぶ。  亜玲は無言で俺の身体をひっくり返した。 「とりあえず、解そうか。このままだと、辛いでしょ?」  ……亜玲は、最後までするつもりなんだ。奴の言葉で、俺はすべてを悟る。  嫌なのに。心は嫌だって言っているのに、本能は歓喜していた。  欲しいものを貰えると。そのちぐはぐさが、俺を余計に苦しめていた。

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