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「祈のそういう顔、とってもそそる」  亜玲がそう呟く。  その言葉はしっかりと耳には届くけれど、頭は上手く理解できなかった。  もう、頭の中はぐちゃぐちゃだった。 「ぁ、あっ」  粘着質な水音が、聞こえてくる。  口からは絶えず声が漏れてしまって、もうなにがなんだかわからない。  身体の奥をいじられて、めちゃくちゃにされて。それに、この行為に愛なんてない。  なのに、どうして……俺は、亜玲を拒めないんだろうか。 「……指、二本挿ってるの、わかる?」 「わか、んない……」  そんなもの、わかるわけがない。  そういう意味を込めてぶんぶんとくっびを横に振れば、亜玲は俺のつむじに口づけを落としてきた。 「そっか。……じゃあ、もう一本増やそうか」  亜玲がそう言ったのとほぼ同時に、身体が感じる質感が増えた。  宣言通り、亜玲が俺の後孔に埋め込んだ指を増やしたのだろう。 「ぁ、あれ、い……」  身体の奥がじんじんとする。  シーツを掻いて逃げようとするのに、逃げられない。  さらには、身体の奥――粘膜がひくついているのがわかった。苦しい、辛い。  俺が亜玲にもう一度視線を向ければ、亜玲は俺の後孔から指を引き抜いた。いきなりのことで、驚いて目を見開く。  そのまま疲れ果てて、俺はベッドに倒れこんだ。……あぁ、眠たい。 「祈、眠っちゃダメだよ。ほら、起きて」  しばらくして、ぺちぺちと頬を叩かれて起こされた。  重たい瞼を上げれば、亜玲が俺の顔を上から覗き込んでいた。亜玲は人のよさそうな顔に、意地の悪い笑みを浮かべている。  ……やっぱり、こいつは悪魔だ。 「折角だから、起きてくれなきゃ寂しいじゃん。……それとも、祈は眠ったまま犯されるのが好きかな?」 「……そんな、わけじゃ」 「じゃあ、起きて」  亜玲が俺の腰を掴んで、半ば無理やり俺の身体を起こした。  そのまま四つん這いの姿勢を取らされて、俺の後孔になにか熱いモノが触れた。  ……俺がうとうととしている間に、亜玲は衣服を脱いでいたらしい。 「……じゃあ、挿れるね」  亜玲の手が、俺の身体を固定する。  その後、亜玲の陰茎の先っぽが俺の後孔にぬぽりと埋め込まれたのがわかった。 「ぁ、つい……」  先っぽが挿っただけなのに、もう苦しい。逃げたくて、たまらない……はず、なのに。  オメガとしての本能が、孕むことを望んでいる。このまま、亜玲に犯してほしいって――。 「うん、熱いよね。……祈のナカも、すっごく熱いよ」  ぼうっとする俺の頭に、亜玲のそんな言葉が響く。  それに意識を奪われていると、亜玲がぐっと腰を押し進めたのがわかった。  指とは全然違う太いモノが、俺の身体を貫く。生まれて初めて受け入れた男のモノは、俺の身体を容赦なく苦しめていた。 「ぁ、あ、ぬ、け……!」  振り向いて、亜玲を睨みつけて。必死にそう吐き捨てた。  けれど、それは失敗だった。 (まだ、半分も……)  亜玲のモノが、まだ半分も挿っていないことがわかってしまったからだ。  青ざめる俺を見て、亜玲が笑った。それは、とても意地の悪そうな笑みだった。 「まだ、全然挿ってないよ。……ほら、頑張って」  頑張ってなんて言われても、頑張れないことだってある。  そう言いたいのに、言えない。俺が抗議しそうなことを読み取ってか、亜玲が腰をさらに押し進めてきたからだ。 「ぁあっ、あっ!」  身体を支えている俺の腕が、ぷるぷると震えている。  このままだと、崩れてしまいそうだった。 「ひぐっ、あ、あ、れい……」  もう、無理だ。やめてほしい。  振り向いて、俺は涙で歪んだ視界で亜玲を見つめる。俺の口は中途半端に開いていて、飲み込めなかった唾液が零れて、シーツを濡らしていた。 「……かーわいい。その顔も、すっごくそそる」  亜玲が、俺の耳元に唇を近づけて、そう囁いた。  ――ゾクリ。  瞬間、そんな感覚が俺の身体を突き抜ける。 「よだれまで垂らして、そんなにいいの?」  いいわけじゃない。ただ、苦しいだけなのに。  俺の腰を掴む亜玲の手。その片方が、俺の口元に近づいてくる。 「俺の指でも、噛んでみる?」  そう問いかけて、亜玲は俺の口に自身の指を押し込んだ。

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