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(……こんなのっ!)  そう思うからこそ、俺は亜玲のその指を思いきり噛んだ。  こうすれば、亜玲が怒ってやめてくれるのではないか。そんな小さな期待が半分。もう半分は――乱暴に犯されるのではないかという、期待。  まるで相反する気持ちを抱きかかえながら、俺は亜玲の指に歯を立てる。亜玲は、笑っていた。 「甘噛みしちゃって、可愛いね。……ほら、もうちょっと頑張って」  亜玲がそう言って、さらに腰を押し進めた。  なんとも言えない痛みが身体を襲って、亜玲の指を噛む歯に力が入る。  ……亜玲は、指を噛んだことに関して、なにも言わなかった。 「っはぁ、祈のナカ、すっごく熱いね……」  うっとりとしたような声で、亜玲がそう呟いた。  さらにぐっと腰を押し進められる。亜玲の腰が、俺の尻に当たったのがわかった。 「全部、挿ったね……」  そう呟いた亜玲の言葉に、俺の意識が一気に結合部に集中する。  俺のナカを満たしているのは、熱くて太い――亜玲の屹立。  ……こんな風にされるなんて、想像もしていなかった。 「本当、祈のナカ、吸い付いてくる。……気持ちいい?」 「そ、んなわけっ!」  そんなわけない!  そう言おうとしたのに、言葉にならなかった。律動が始まったからだ。  肉棒が俺のナカから出て行こうとする。それに一抹の寂しさを覚えていれば、今度は一気に奥まで貫かれた。 「ぁあっ! あぅ……!」  間抜けな声が、口から零れる。  亜玲の肉棒が、俺の奥を突いてくる。  痛み、苦しみ。いろいろなものが身体を支配するのに、頭を支配しているのは確かな喜びだけ。  オメガの本能が、喜んでいるのだ。孕まされることを望む、質の悪い本能。それが、俺の中で歓喜して暴れ回っている。 「祈……ぁ、気持ちいい……」  亜玲の抽挿が激しくなる。その動きが激しくなると、ぐちゅぐちゅという淫らな水音も大きくなった。  多分、さっき亜玲が指に垂らしていた潤滑油かなにかだろう。その所為なのか、俺の粘膜がひくひくとしている。  亜玲のモノを、嬉しそうに締め付けているのがよくわかった。 「いぁ、やだぁ……」  ぶんぶんと首を横に振った。  なのに、亜玲は止まらない。容赦ない突き上げに、俺の頭がくらくらとする。  ――おかしくなる……!  頭の中で鳴り響く警告。しかし、それと同時に「おかしくなりたい」という願望も生まれて。 (も、どうしたいのか、わかんないっ……!)  シーツに顔をうずめて、俺は微かに感じる快感に耐えるしかなかった。  きっと、今の俺の顔は涙と唾液と鼻水でぐちゃぐちゃになっているだろう。……見るに堪えない姿だと、思う。 「祈……」  後ろから俺の名前を呼ぶ亜玲の声は、うっとりとしていた。  ……あぁ、コイツって情事のときはこういう風に相手を呼ぶんだ……。  とか、一生使えそうにない知識を手に入れた。……もう、忘れたい。 「うぁ、あ、あ、れい……」  ぱんぱんと肉同士がぶつかる音がする。水音もどんどん大きくなっているような気がして、身体中に快感が蓄積していく。 (……もっと)  無意識のうちに、心がそう叫ぶ。  ハッとしてその本能をねじ伏せようとすると、俺の身体のナカでなにかがはじけ飛んだ。  最奥に熱い飛沫を放たれたかと思えば、亜玲は陰茎の先っぽで俺の奥をぐりぐりと刺激する。……いや、違う。 (ぁ、お、く、あつい……)  これは孕ませようとしているんだ。  ……それは、アルファがオメガを孕ませようとしている本能的なものなのか。  はたまた、亜玲自身が俺を孕ませようとしているのか。生憎、俺にはそれを知る術がない。 「ははっ、祈、もしかして……」  ふと、亜玲の手が俺の陰茎に伸びる。俺の陰茎は、痛いほどに勃っていた。 「ナカをいっぱいつかれて、興奮しちゃったの?」 「ちがっ!」  亜玲がゆるゆると俺の陰茎の竿をしごきながら、そう問いかけてくる。  一度出した所為で、白濁と先走りでドロドロになっている俺自身のモノ。それを、亜玲のきれいな手が撫でている。 「触ったら、もっと硬くなってきたね。……可愛い」  その指が、先端の鈴口に触れる。瞬間、俺の身体がびくんと跳ねた。 「いいよ、このまま出しても。……もう一回出しておかないと、辛くなるだろうし」 「……ぁ?」  亜玲の言葉の意味が、よくわからない。ぼうっとする意識で亜玲を見つめれば、亜玲は笑っていた。 「ほら、まだ夜は始まったばっかりだし? ……罠にかかった獲物を逃がすほど、俺もお人好しじゃないんだよ」

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